【今日のおすすめ絵本】〈児童書〉(対象…小学校低学年〜大人まで)
『みにくいおひめさま』
作…フィリス=マッギンリー
訳…まさきるりこ
絵…なかがわそうや
瑞雲舎
(あらすじ)
むかし、ある遠い王国に、ひとりっこの王女がいました。名前をエスメラルダといい、ただひとつのことをのぞいては、世界一しあわせな王女でした。
たったひとつだけ足りないもの…。
エスメラルダは、うつくしくなかったのです。
エスメラルダは、「みにくいおひめさま」として、国じゅうに知られるようになりました。
お医者様も魔法大臣も、エスメラルダを美しくすることはできません。
王女のみにくさを嘆いた王さまは国じゅうの新聞に広告を出しました。
『懸賞 みにくいむすめを、うつくしいむすめにかえることのできたものに、賞金として金貨を一袋とらせる。ただし、しくじったものは、首をはねる。』
一週間後、かわったお客がお城にやってきました。
それはなんの特徴もない普通の女の人で、片手に新聞をにぎっていました。王さまの出した広告を見てやってきたのです。
怪しむ王さまに、女の人は一枚の写真をとりだして見せました。
「これは、わたくしの五人のむすめでございます。ひとりもみにくいものは、おりませんよ。」
五人の娘は、王さまがこれまで見たことがないほど美しい娘ばかりだったのです。
王さまはその不思議な夫人を信じて頼むことにしたのですが…。
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全てが思い通りになる恵まれた生活の中で、自分が醜いということを知らされず、8歳のお誕生日パーティーでお隣の国の王子の振る舞いによってそのことに気付かされたエスメラルダ。
それは大事に大事に育てられ、まだまだ自分中心に世界が回っているような幻想の中に身を置く、幼い子どもたちの姿に重なります。
主観的な評価と、成長過程の中で遭遇する客観的な評価。
人間はその擦り合わせのなかで自己同一性を確立し、成長していきます。
不思議な夫人によって、どんどん美しさを手に入れてゆくエスメラルダ。
本当の美しさとは何か。
子どもだけでなく、大人にも、女性だけでなく、男性にも、ぜひおすすめの作品です。
中川宗弥さんの挿絵も非常に素晴らしく、抽象的なタッチの絵が、ストーリーをしっかりとなぞりながらも、どこか読者に情景を想像する余地を残してくれているような、不思議な雰囲気を醸し出しています。
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