今週のお題「最近おもしろかった本」
『昔話からのメッセージ ろばの子』
著…小澤俊夫
小澤昔ばなし研究所
こちらの本は、標題にもなっている「ろばの子」をはじめ、日本や世界の昔話を教材に、小澤さんの考察や、昔話からのメッセージが紐解かれている作品です。
昔話とはいったい何なのか。
昔話はそもそも、世界はこういう物だよ、ということを語るものであって、決して、世界はこうあるべきだ、と主張するものではありません。(本文ママ)
(あらすじ)
〈桃太郎-山行き型〉
川から流れてきた桃をおばあさんが食べると美味しかったので、「おじいさん用にもう一つ流れてこい」と言うともう一つ流れてくる。
おばあさんは家に帰って桃をお櫃に入れておく。
仕事から帰ってきたおじいさんが桃を食べようと、お櫃(おひつ)を開けようとするが、なぜだか開かない。
仕方ないからまさかりで、お櫃を割ると男の子が出てきたので桃太郎と名付ける。
ある日、近所の友達が来て木を拾いに行こうと誘うが、桃太郎は、9日連続で、なにかと理由をつけて断る。
10日目にやっと山へ行くが、木の根元でまた、ぐうぐう寝る。
ところが働き出すと木を株ごと引っこ抜いて背負って帰ってくる。
木をどこへ下ろそうかと言っているうちに木小屋へ下ろしたら、木小屋が勢いで飛んでしまう。
*
*
*
これは、奥備中に伝わる桃太郎だそうです。
散々怠けたうえ、いざやる気を出したら裏目に出て、みんなに迷惑をかけまくるという、えらいなんともいえない桃太郎ですが、妙に親近感が湧いてくるのはこの山行き型桃太郎が自分に似ているせいでしょうか。
鬼を退治して名を残す桃太郎もいれば、寝てばかりで、いざ働くと今度は全然役に立たない桃太郎もいる、というのは、昔話が世の中をありのまま描いている、世界のミニチュア版だからだそうです。
「昔話は人類全体の記憶」
「うまくいかない人生もその人の人生である」
「昔話はそういう例も見逃さず、きちっと語り、そういう失敗ばかりの若者をお年寄りが大らかな心で温かく見守っている、受け入れてあげる雰囲気があること、こういう話を伝えてきた村の人たちの温かさに喝采をおくりたい」、と小澤さんはおっしゃっています。
美化されていない、ありのままの昔話。
人間くさくて、温かくて、素朴で、私も大好きです。
非常に読みやすい文章で、子育て中の親御さん、思春期を迎えこれからまさに大人へと成長していく過程のお子さん、社会人の方、お孫さんのいらっしゃる世代の方まで幅広く読んでいただけると思います。
世に出まわっている昔話だけが本当の昔話ではないのです。
これを読めば「人類全体の記憶」としての、「本当の昔話」にきっと出会いたくなりますよ。
ランキングに参加しています。以下の投票ボタン押していただけると励みになります↓( ^ω^ )
にほんブログ村
絵本ランキング