『大人のためのおはなし会』レポ〜読書好きのひとり時間〜
こんにちは、最近おやつにスライスチーズを一枚ずつ食べるのにはまっているoicchimouseです。
先日、図書館主催の『大人のためのおはなし会』に行ってきました。
ずっと気になっていたものの平日のお昼前ということもあり、なかなか予定が合わず行けていなかったのですが、今回ついに参加することができましたので、簡単にレポートさせていただきます。
今回のおはなし会は、絵本を読むというスタイルではなく、全てストーリーテリング(語り手が昔話などの物語を覚えてみんなに語って聞かせる)のスタイルでした。
事前申し込みは不要。先着順に15名まで入場可だったので、少し早めに行って受付で名前と住所を記入しました。
10分前に到着しましたがこの時点ですでに4名の方が着席していらっしゃいました。(図書館によっては先着順ではなく事前申し込みや予約が必要なところもあるそうです。)
『大人のためのおはなし会』、どんな人が来るのかなあ。
やっぱり普段子どものおはなし会に付き添いで来ているお母さんたちかな?なんて思いながらキョロキョロしていたのですが、大学生らしき女性や、年配の紳士とご婦人の仲良しグループ、私と同じ世代と思われる女性などいろいろな世代の方が来られていました。
男女の割合もちょうど半々といったところです。
開始時間の頃には満席になりました。
年配の紳士の方は、「なぜおはなし会に来てくれたのですか」という職員さんからの質問に対し、「子どものお話の中にもいくつもの珠玉の言葉がある。それを拾いにきた。」とおっしゃっていました。⬅︎素晴らしすぎる動機
私は心の中で「いいね」を押しまくりました。
◎『大人のためのおはなし会』とは?
普段子どもたちのために行っている『おはなし会』を大人の方にも楽しんでもらおう!という試みだそうです。
私が今回参加させていただいた『大人のためのおはなし会』では、子どもたちの時に行われている「手遊び」がなかったり、簡単には先が読めない、大人でも充分楽しめるような内容の昔話がチョイスされていました。
現在、全国的にこの『大人のためのおはなし会』という活動が広がっておりますが、別の図書館や語り手さんのボランティアグループでは、『子どものおはなし会』と敢えて同じプログラムを使ったり、ちょっとした体操代わりとして「手遊び」を入れているところもあるそうです。
主催者によって、いろいろと特色があって面白いですね。
◎今回参加したおはなし会の概要
平日金曜日
AM10:30から1時間
語り手の人数は6人
先着15名まで(図書館内おはなしの部屋にちょうど入り切る人数)
→今回は満席
プログラムは全6話(日本の昔話4、外国の昔話2)
こちらの図書館では『大人のためのおはなし会』は2ヶ月に一度開催されている
◎そもそも昔話は子どもだけのものなのか?
昔話は子どもだけのものではありません。
カナダとアメリカの児童図書館活動の中心として活躍し、児童図書館員・児童文学者でもあるリリアン・H・スミス氏は著書『児童文学論』の中で以下のように述べています。
「伝承の文学がすべてそうであるように、昔話は元来、おとな子どもをとわず、すべての人の所有物だった。それらは、人類の幼年時代から、庶民たちによって保たれ、使われ、大事にされてきた。人里離れた遠い地方に、昔ながらの形で生き残っていたのを、学者たちが、口承のことばから書きとめた結果、印刷された本となって永久に保存されるようになった。」
「おとなは、自分たちの読書範囲から昔話をとりのぞいてしまった。昔話が子どもじみた空想にみち、非現実的で、おとなの考える世界ーーー自然の法則の働きが当然のこととして受け入れられている世界ーーーに結びつかないと、思われているからである。しかし、おとなの会話や文章のなかに、どんなにたくさん昔話が引用されているかは、おどろくほどである。」
(『児童文学論』リリアン・H・スミス 岩波書店 〈第4章 昔話〉より一部抜粋)
また、口承文芸学者で小澤昔ばなし研究所所長である小澤俊夫氏も、自身の著書『昔話のコスモロジー ひとと動物との婚姻譚』の中で次のように語っています。
「これらの昔話は、子どものためばかりでなく、家庭で親も子も、あるいは共同体のなかでおとなも子どももともに聞いてきた、そして聞くことのできる話なのである。」
「わたしは、昔話ないしは広くとって民話のなかには、子どもにとくにふさわしい、童話とよばれるべき話もあるが、すべての昔話、すべての民話がすなわち童話というわけではない、と考えるのがもっとも妥当だろうと思う。」
(『昔話のコスモロジー ひとと動物との婚姻譚』小澤俊夫 小澤昔ばなし研究所 〈序章 昔話の比較研究〉より一部抜粋)
ふむふむ。どうりで、大人が聞いても楽しめるわけですね( ^ω^ )
◎どんなおはなしをしてもらった?
日本の昔話が4話、外国の昔話が2話でした。
いくつか知っているお話もあったのですが、初めて聞いて特におもしろかったお話を簡単にご紹介させていただきます。
『ばあさまと踊る娘たち』(日本の昔話)
ばあさまの家の中に、毎晩見知らぬ美しい娘たちが勝手に上がり込んできて、同じ歌を歌い踊りまくる。この娘たちの正体は一体…?
➡︎『おしょうさんとカックリカ』という昔話があるのですが、それと内容がとてもよく似ているように感じました。おそらく類話だと思われます。こちらは、お寺の庭で化け物が踊っているのを見た和尚さんが、化け物たちと一緒に踊り、後をつけていくとその正体は実は…〇〇だった、という昔話です。
『ほらあなさま』(日本の昔話)
お願いするとなんでも出てくる村の「ほらあなさま」。村のよくばりさんが、「ほらあなさま」に、ものすごくたくさんのお膳をお願いすると本当に用意される。その後、よくばりさんの夫婦に子どもが生まれるが歩けない。ある日いきなり歩き出したと思ったら、米俵を二つもかついで外へ出て行ってしまう。向かった先は「ほらあなさま」で……。
➡︎怖い、怖すぎる。何気にゾクっとするホラーな雰囲気の昔話ですが、なぜか興味をそそられます。
『リンゴ娘ニーナ』(イタリアの昔話)
ある家に娘が二人。一人の娘が、リンゴと一緒にカゴに入れられて売られる。(リンゴでいっぱいのカゴが一つ、リンゴとニーナ入りのカゴが一つ、全部でカゴ2つ)
リンゴを買ったお妃に気に入られ、お城に住むことになるが、他の家来から妬まれ嫌がらせを受ける。お城のタンスの中から謎の美男子が現れピンチを2度助けられる。3度目のピンチは直接助けてあげられないということで、アドバイスだけもらってニーナが自分でピンチを乗り越えると美男子はタンスから出られるようになる。美男子の正体は王子だった。
➡︎これに非常によく似たお話が私の知るかぎり2つありました。すべてイタリアの昔話です。
1つ目は『梨の子ぺリーナ』
話はほぼ同じで、梨と一緒にぺリーナが売られ、お城に住むことになり、困難を乗り越え王子と結ばれます。
2つ目は『プレッツェモリーナ』
プレッツェモリーナが魔女にさらわれる。助けた黒猫〈ガット・ベルラッコ〉の力を借りてピンチを切り抜ける。ガット・ベルラッコは実は王子で魔法が解けて元の姿に戻る。
(なぜだか無性に声に出して繰り返し言いたくなる名前「ガット・ベルラッコ」)
この3つのお話、ピンチの乗り越え方も酷似しており、国もすべてイタリアなのでおそらく類話でしょう。
『リンゴ娘ニーナ』に繰り返し強調されている「2」という数字が興味をそそります。
大体昔話は「3」のことが多いのですが、気になります。
◎感想
〈子どもの付き添い〉というかたちではなく、
「私に向けて語ってくれている」
というのがなんだかとってもうれしかったです。
大人になると、誰かに読み聞かせしてもらったり、語りをしてもらう機会はあまりないですからね。
大人が相手ということで、普段より緊張されている様子も伝わってきましたが、心にじんわりと語り手の方の言葉の一つ一つが沁み込んできました。
活字を読むことの方が多く、普段の生活で目に頼り過ぎているので、子どもたちのように耳だけでちゃんと想像を膨らましてお話を理解できるか心配していましたが、さすが口承伝承されてきた昔話だけあって、想像の妨げになるような余計な言葉は一切なく、シンプルかつしっかりとポイントをおさえた語りになっているので、すんなりと昔話の世界に入っていくことができました。
映画を観た後のような、昔の世界にタイムスリップしてきたような非日常を味わうことができました。
みなさんも機会がありましたらぜひ一度参加してみてください。