【今日のおすすめ絵本】(対象…4歳頃から大人まで)
『あくまのおよめさん』ーネパールの民話ー
稲村哲也・結城史隆…再話
イシュワリ・カルマチャリャ…画
福音館書店
(あらすじ)
主人公のラージャンは、道で一枚の銀貨を拾います。
おとうさんやおかあさんは、銀貨で羊🐏や豆🫘を買うように言いますが、ラージャンは2人の言うことを聞きません。
せっかく自分が拾った大切な銀貨だから国中にたった一つしかないものを買おうと心に決めていたからです。
ラージャンは、銀貨で小さな猿🐵を買いました。(猿を見たことが無かったので、国中にたった一つしかないものだと思ったのです。)
ラージャンが大切に育てた猿は、やがて大きくなり、屋根の上を飛び回るようになりました。
ある日、猿は、村に住む悪い悪魔が、大きな家の屋上で村人から取り上げた宝物を広げたまま居眠りしているのを、見つけ、悪魔から宝物を少しずつとっては、かくしてしまいます。
気付いた悪魔は怒り狂い、猿を地面に押さえつけましたが、賢い猿は、悪魔に「およめさん」を見つけてあげるから、と言って許してもらいます。
猿は家に帰って訳を話しました。
ラージャンたちは、みんなで木を彫って色を塗り、「あくまのおよめさん」を作りました…。
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アジアンテイスト満載の両界曼荼羅のようなタッチの絵に対し、『あくまのおよめさん』という微妙に絵と合っていないような西洋風のタイトルがアンバランスで謎めいた雰囲気をかもし出しています。
表紙に描かれているエキゾチックなおじさんが「あくま」。その隣にいるのが、ラージャンが銀貨で買った「猿」です。
私たちが一般的に思い描く悪魔とは随分イメージが異なります。(というか、ほぼ普通の人間。)
図書館で小さいお子さんが自ら進んで手にとることはまず無さそうな、いぶし銀のごとき渋さが光るビジュアルですが、こちらの絵本、ものすごーく面白いです。
「およめさん」を手作りする
というシチュエーションになることは、お話の中といえども、そうそうありません。
親が銀貨の使い道をアドバイスしたにも関わらず、ラージャンは親の考えでなく、自分の考えに従って銀貨の使い道を選び、「一つしかないと思ったもの(猿)」を手に入れます。
そして、それが最終的に本当に「一つしかないもの(幸運をもたらす特別な猿)」になる、という展開には、子どもに本来備わっている〈選びとる力〉を邪魔してはいけない、大人は子どもの〈選びとる力〉を信じてあげなければいけない、という、昔話からのメッセージが込められているような気がします。
わが家でも数えきれないほど繰り返し図書館で借りている、リピート率の高い作品。
最寄りの図書館では保存庫に保管されていますが、かつてはかなり子どもたちに人気があったのだろうな、という読み込まれた痕跡が、絵本のそこかしこに見られます。
ネパールの民話で、1988年に福音館の「こどものとも」として発行され、その後書籍化されたものです。