【今日のおすすめの本】(対象…大人向け)
『おばけの正体』
井上円了 著
国書刊行会
(あらすじ)
安政5年生まれの「お化け博士」井上円了の『おばけの正体』です。
井上円了は、明治時代にこっくりさんの正体を科学で解明したことでも有名な、近代的妖怪研究の創始者です。
明治31年に出版した『妖怪百談』とその続編が絶版になり、そのまま再版するのも面白くないと考えた円了が、新たに集めた妖怪事件からも選択抜粋し、『おばけの正体』としてまとめあげて出版したものが本書です。
その理由について、円了は、冒頭で、「妖怪に迷える児童に読ましめんとするにあれば、文章は言文一致を用い、事項は児童の了解し得る程度を計り、平易簡明を主とせり、つまり家庭のおとぎ話に資せんとするの微意なり。」と記しています。
安政生まれでいらっしゃるので、少しお侍さん風の語り口になっていて、令和の児童にはなかなか「平易簡明」とはいかないように感じますが、確かに内容は、お化け話に親しみつつも、怖がりの子どもたちを安心させてあげようというような優しさが垣間見えるような気がします。
短い妖怪事件とその正体が、130の項に分けて収録されていますが、円了は、全てが、「正体のあるおばけ」と言っている訳ではありません。
8、9割は、科学で解明できる迷信としながらも、残りの解明できない怪異については、「真怪」と呼び、「他日別にこれを集成して、『真怪論』を発行する予定なり」と述べています。
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小学生のとき、放課後こっくりさんをしていた子たちが、教室から出られなくなってしまい、翌日、教頭先生がクラスにきて、「こっくりさんは迷信だけど、具合が悪くなった子どもも全国で何人かいるので、絶対にやらないでください」と言っていたことを思い出しました。←「えっ!具合が悪くなっているなら迷信じゃなくてむしろ効果抜群なんじゃ……😱」
「学校の教頭先生」というものすごく現実的な存在の大人が「こっくりさん」という全く別世界の存在について真剣な顔つきで注意する、というアンバランスさが妙に不気味で、怖がりの私は、この出来事にものすごく怯えていたのですが、当時、この本を読んでいたらちょっとは、怖がらずに学校のトイレに行けたかなぁと思います…。
最近はあんまり聞きませんねぇ、学校の怪談話。
なぜでしょう?👻