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タヌキの生徒になめられるリス先生『たぬき学校』

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【今日のおすすめ絵本】〈児童書〉(対象…小学校低学年〜大人まで)

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『たぬき学校』

今井誉次郎 作
講学館

 

 

(あらすじ)
これは、山の中のたぬき学校のせいとたちが、そつぎょうするまでの、長い長いはなしです。
せいとたちは、いたずらです。先生を、おとしあなに落としたりなどします。ひどいけんかをして、友だちにかみついたりします。だけど、たぬき学校では、こういうせいとは、よいせいとですから、ポン先生は、みんなをかわいがります。みんなも、ポン先生がすきです。(冒頭前書きより本文ママ)

作者の今井誉次郎さんは、明治生まれの元教師の方で、ポン先生は今井さんご本人がモデルです。

初版が1958年、日本が高度成長期に入る直前くらいの古い作品ですが、何度読んでも飽きのこない味わい深さがあります。

 

登場人物は…

ポン先生、ポン太、ポン吉、タヌ子、タヌ八、ポン子、ポン三郎、人間の子どもタケオくん、リス先生、です。

 

何度読んでも、たぬきの生徒の名前の区別がつきませんが、問題ありません。

 

私のお気に入りは後半から登場するリス先生です。とにかくシュールで突っ込みどころ満載ですが、ポン先生と同様に子ども達への愛情に溢れたとても素晴らしい先生なのです。

 

以下、リス先生登場シーン⬇︎

 

ポン先生「きょうから、リス先生にきてもらって、木のぼりのけいこをはじめます。」

 

タヌ八「ちぇっ、つまんねえの。リス先生なんか。」⬅︎(まだ登場してもいないのに…)

 

ポン先生「どうしてですか。」

 

タヌ八「だって、リス先生なんか、小さいんだものおかしいや。」⬅︎(小さいだけでおかしがられるリス先生)

 

ポン先生「小さくたって、リス先生は、木のぼりの名人ですよ。だれよりも、木のぼりがうまいですよ。」

 

タヌ八「だって、あんな小さい先生に習うなんて、はずかしいや。」⬅︎(タヌ八に完全になめられているリス先生)

 

ポン先生「そんなら、タヌ八さんは、クマ先生にでも習いたいのですか。クマ先生も、木のぼりはじょうずだけど、おこるとなぐったり、子どものひとりくらいたべてしまったりしますよ。」⬅︎(全国ニュースレベルの問題教師も在籍しているタヌキ学校)

 

タヌ八「そんならいいや、リス先生だって。」⬅︎(そうだね)

 

いよいよリス先生の登場です。

 

リス先生「わたしがリスです。」

 

 

ここから木のぼりの実習が始まります。リス先生は優しいですが、なかなかのスパルタ式です。ここから木のぼり実習をめぐって抱腹絶倒の驚くべき展開が待ち受けているのですが…。

50年ほど前には推薦図書になっていたというだけあって、内容が本当に素晴らしいです。

 

子どもたちを強く惹きつけるユーモアだけでなく、ストーリーをとおして、生きていく中で大切なことがとてもたくさん描かれています。

読者もいつの間にかタヌキ学校の生徒になってポン先生から学んでいるのです。

 

あとがきには今井さんの、児童文学に対する熱い思いがあふれ出ています。


「大人の文学は『自分のために書く』が、児童文学は、『児童の発達心理に正しく則しつつ、科学的な方法で彼らを開眼していく影響力を考え』なければならない」

 


この言葉は、確か、かこさとしさんも同じようなことを仰っていたかと思います。戦時中の教育と、それに翻弄される子どもたちの姿を見てきた児童文学作家の方だからこその強い思いがひしひしと伝わってきました。

 

後世に伝えていきたい名作です。

 

 

同じ今井誉治郎さんの作品、『おさるのキーコ』も秀逸です⬇︎

 

oicchimouse.com

 

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