【今日のおすすめ絵本】(対象…中学年から大人まで)
『きんぎょのおつかい』
高部晴市 絵
与謝野晶子 文
架空社
(あらすじ)
太郎さんは駿河台の菊雄さんのところへ、おつかいをやらなければならない御用があるのですが、女中の梅やがご病気なので、どうしたらいいだろうかと考えていました。
そうすると弟の二郎さんが、『兄さん、きんぎょをおつかいにやりましょう』といいました。
太郎さんはよろこびまして、『そうしましょう、赤をやりましょう』といいますと、『僕の白も一緒にやりましょう。それから千代ちゃんのぶちも一緒にやっていいでしょう』二郎さんのこういった言葉に千代ちゃんも賛成したものですから、三びきのきんぎょはいよいよおつかいに行くことになりました。
(本文ママ)
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「赤」「白」「ぶち」というのは、金魚の名前です。
この三匹が初めての電車に乗り(この金魚さんたちは、尾びれを足の代わりにして直立し、二足歩行スタイルで歩きます)お使いに行って帰ってくるというシンプルなお話なのですが、昔の、丁寧すぎるくらい丁寧な言葉遣いや文章が、とても心地よく心にしみわたるのです。
言葉の変遷はごく自然なことで悪いことではないですが、明治時代の少し古めかしく感じられる丁寧な言葉は、私たちが現代人だからなのか、とても新鮮でユニークに感じられます。
歌人として有名な与謝野晶子さんのイメージが覆るようなユーモアあふれる文章に、高部晴市さんのレトロでエネルギッシュな挿絵が作品の魅力を何倍にも引きだしています。
何よりこの三匹がしっかりしているようで、ちょっと抜けていたり、おっちょこちょいだけど真面目だったり、と何とも憎めないキャラクターなのです。
途中、三匹が好物の「ぼうふら」の話で盛り上がる場面も、じわじわときます。
本の装丁も抜群にすばらしく、随所にこだわりが感じられ、ぜひ手元に置いておきたい一冊です。
文中の挿し絵には高部さんのちょっとした遊び心が隠れていますのでぜひ探してみてください。
先日、架空社さんとお話しさせていただいた際に、こちらの『きんぎょのおつかい』のほかに、与謝野晶子が書いた童話で絵本になっているものが他に2作あることを教えていただきました。
1つ目が『こけ子とこっ子』
2つ目が『三匹の犬の日記』
という絵本です。(←こけ子・・・こっ子・・・犬が日記・・・。タイトルを見ただけで絶対面白いと確信できますね…。)
現在、手に入りにくくなっているようですが、もし機会がございましたら、ぜひぜひあわせて読んでみてください。
こちらのブログでも、またレビューしていきたいと思います。