【今日のおすすめの本】(対象…高学年から大人)
『杉森くんを殺すには』
長谷川まりる
くもん出版
第62回野間児童文芸賞(2024年)受賞の『杉森くんを殺すには』。
年明け1冊目にpostする本としてはタイトルが穏やかではありませんが、そろそろ学校では3学期が始まりその先の新学年が見えてくるこの時期だからこそ1人でも多くの方にぜひ読んでいただきたい作品です。
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主人公は高校一年生の「ヒロ」。
ある日、杉森くんを殺すことにしたヒロは、義兄のミトさんに、電話で報告します。
ミトさんはヒロに、
1.やりのこしたことをやる
2.杉森くんを殺さなきゃいけない理由をまとめておく
という2つの助言をします。
「やりのこしたこと」を楽しそうにこなしていく日常と心の中に影を落とす「杉森くんを殺す15の理由」がまるで明滅するかのように交互に語られる中で見えてくる真実。
そして訪れる温かで優しいラスト。
最近メディアなどでよく目にする「生きづらさ」という言葉は、多くの人に簡潔で明瞭に伝わるようでいて、実際には実体との乖離が随分あるように思います。
ひと言でラベリングできるほどシンプルではない、混沌とした何か。
このお話は、子どもたちの心の中にある数々のパーツをそんな混沌とした中から丁寧に拾い集めた記録です。
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「一か所だけに執着してたら依存。でも、いっぱい依存先をもって、あちこちに相談できてたらそれは自立。」
文中に登場する印象的な台詞です。
巻末には、臨床心理士の高橋恵一さんによる「あとがき」をはじめ、「こまったときの相談先リスト(厚生労働省)」など、子どもたちが抱える問題の一助となるような情報がたくさん掲載されています。
以下は、帯を担当された翻訳家の金原瑞人さんの推薦文です。
「読み終えた瞬間、自分はこんな本を読みたかったのだと確信する本がたまにある。これは間違いなく、そういう作品だ」
子どもはもちろんですが、大人の方にこそぜひ読んでもらいたい、知ってもらいたい作品です。