【今日のおすすめの本】(対象…大人)

『宮沢賢治必携』
佐藤泰正・編
學燈社
宮沢賢治作品に関するいくつかの代表的な論文と、宮沢賢治詩人事典・賢治詩事典・賢治童話事典が、一冊にまとめられた『宮沢賢治必携』です。
宮沢賢治の研究をするときには、通常、筑摩書房の『新校本宮沢賢治全集』というものを使います。
校本には、一般的な全集には含まれていない作品など、生前賢治が書き遺したほぼ全てのもの(童話・詩・短歌・メモ・書簡・落書き・童話の草稿・未完成の作品・断片etc.)が収録されています。
また、本文篇とは別になっている校異篇には、各作品における賢治の推敲の記録が掲載されており、これは、賢治作品を紐解く上で非常に重要な手がかりとなります。
この『新校本宮沢賢治全集』は結局全巻読まないと論文が書けないのですが、なにしろ賢治の作品は全部で1400作品以上あるので、読み終わったあとに、話が混ざったり、忘れたりしてきます。
そんなときに、活躍するのが、この『宮沢賢治必携』です。
めちゃくちゃ細かい作品(断片とか)までは含まれていませんが、各ページに、それぞれの賢治作品の梗概(あらすじ)と評価が簡単にまとめられているので、記憶を呼び起こしたり、考えを体系的に整理していくときに役に立ちます。
また、この本は賢治研究ではなく、普通に作品を読んで楽しみたいときにも、使うことができます。
「宮沢賢治のレファレンスブック」として使うのです。
現在、絵本として出版されている賢治童話は、賢治の作品の中でも比較的、出版に耐えうるものが選ばれています。つまり、形が美しく整っているものです。
しかし、実は、賢治の作品は世の中にあまり出回っていないものの中に、ものすごく奇妙で面白いものがあふれているのです…。
出回っていないのに、どうやって読むか。
①まず、この『宮沢賢治必携』の[賢治童話事典]のページを開きます。
②カタログで商品を選ぶように、各作品の梗概(あらすじ)を読んでいきます。
③気になる作品を「青空文庫」さんで、検索して読みます。
推敲の過程で姿や主題が変わってしまったものもたくさんありますが、荒削りで支離滅裂でも、意外と原形の作品の方が魅力的な場合もあります。
例えば、何度もアニメ化や映画化されている『グスコーブドリの伝記』という作品がありますが、これは、もともと『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』という、ばけもの国に住むネネムという登場人物の慢心を描いた作品でした。
『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』➡︎メモ『ペンネンノルデはいまは居ないよ(案)』➡︎『グスコンブドリの伝記』➡︎『グスコーブドリの伝記』(主題:自己犠牲)
という経緯です。
確かに作品としてまとまりがいいのは明らかにグスコーブドリなのですが、話としてぶっ飛んでいるネネムのほうに何故か惹かれてしまうのです。(ネネムは、冒頭の原稿が数枚焼失、また結末部分の原稿も無いのですがそれでも面白い)
『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』の他のおすすめは、『朝に就ての童話的構図』(白いぷるぷるしたきのこに翻弄されるアリたちの話)と『図書館幻想』(ダルゲという謎キャラが登場する奇妙な話)です。
いずれも、「青空文庫」さんで読むことができます。
ぜひ、市場にあまり出回っていない、知られざる宮沢賢治の世界をお楽しみください。
筑摩書房の公式HPはこちらです⬇︎