【今日のおすすめの本】(高学年から大人)

【鬼の橋】
伊藤遊 作
太田大八 画
福音館書店
第三回児童文学ファンタジー大賞受賞作
可愛がっていた異母妹の比右子を、「隠れ鬼」の途中に不慮の事故で亡くした小野篁。
自らを責め、後悔と悲しみに打ちひしがれる中、ある日妹が落ちた古井戸から冥界の入り口(冥界の河)へと迷い込みます。
どこまでも続く「あの世への橋」を渡っている途中、篁は、馬鬼と牛鬼に喰われそうになりますが、ぎりぎりのところで武人のような男に助けられます。
それは、未だあの世への橋を渡れぬまま、鬼から都を護り続けている、三年前にすでに死んだはずの征夷大将軍坂上田村麻呂だったのです……。
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平安時代に活躍した小野篁には、不思議な伝説が数多く残されています。
「昼は朝廷に仕え、夜は冥府へ通い閻魔大王のもとで役人として働いていた」という説話が特に有名で、学校で使う日本史の資料集などにも、たまにさらっと紹介されていたりします。
「あとがき」では、京都で生まれ育った著者の伊藤さんが、当時の史料を紐解きながら執筆されたときのお気持ちが語られています。
「当時のことを記した史料に向きあっていると、なにげない記述のあいまに、生きた人間の姿がちらちらと見えはじめます。その姿に目を凝らすうち、立ちふさがっていた千年の時の隔たりはいつしかなくなり、平安の闇の真っただなかにいる自分に気づく……その瞬間こそが、私にとってのファンタジーの世界なのかもしれません。」(本文ママ)
平安絵巻を思わせるような太田大八さんの挿絵も素晴らしく、雅やかさとはまた違う、その時代の空気感のようなものがリアルに感じられます。
私は、学生時代の四年間を京都で過ごしましたが、バイト帰りに五条大橋を渡るときには、いつも、このお話の情景を橋の上からの景色と重ねて見ていた気がします。
※私が子どもの頃はハードブックしかありませんでしたが、今はこちらの文庫本タイプも出てます。