【今日のおすすめの本】(対象…高学年から大人)

『時をさまようタック』
ナタリー・バビット 作
小野和子 訳
評論社
厳格で息苦しい家に嫌気がさした10歳の少女ウィニー。
彼女が森の中で出会ったのは、地面から湧き出る水を飲む「104歳」の美しい青年だった……
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森の中の地面から湧き出る不思議な水。
その水が、「不老不死の泉の水」だと知らずに飲んでしまい、不条理にも永遠の命を「与えられてしまった」タック一家。
父であるタックと、タックの妻であるメイ、そして、美しい息子のマイルズとジェシィ。
マイルズは22歳の姿のまま、ジェシィは17歳の姿のまま、成長が止まっています。
永遠の命に対し絶望しているタック、運命を受け入れているメイ、妻子に去られてしまったマイルズ、あまり深刻に考えていないジェシィ。
秘密の水の存在を知ってしまったウィニーを、タック一家は一時的に「誘拐」することにします。
タック家での愛情溢れる穏やかで自由な暮らしに、ウィニーは魅了されていきます。
そして、ジェシィは、彼に淡い恋心を抱いていたウィニーに、「17歳になったらあの水を飲んで、一緒に、永久に続く"時"を楽しもう」と誘うのですが……
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このあと、物語の序盤からチラチラ登場していた「黄色い服の男」の正体が明らかになり、お話はさらにドラマチックに展開してゆきます。
私が初めてこの本を読んだのは、確か小学校の5年生くらいだったかと思います。
当時、得体の知れない「死」というものがとても恐ろしく、七夕や絵馬には必ず「長生きできますように」と書いていたのですが、この本を読んでからは、それは書いてはいけないことのように思えて、別のお願いを書くようになりました。
ちなみに、今も死は怖いですが、怖さの種類が子どもの頃のそれとは異なる気がします。
子どもにとっての「死」は「目に見えない死」
大人にとっての「死」は「目に見える死」
そして、また、タックが苦しんでいるのは「目に見えない生」なのかもしれません。
そして、この物語の結末は「読む人によって」または、「読むタイミングによって」ハッピーエンドかそうでないかが分かれます。
トクトクと湧き出る水のように瑞々しく美しい文章が、体全体に心地よく浸透する…そんな特別な一冊です。
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物語の舞台はちょうど8月。
読書感想文のために本を読んだり勧めたりするのは、本来あまり好みではないのですが、このお話は読む人それぞれの心に何かしらの思いを《自然とあぶり出させる力》があります。
そして、序盤は少し退屈に感じるかもしれませんが、物語がドラマチックに動き出す5章からラストまでは、一気に読み進めることができます。
普段、本を読み慣れていない場合は、4章まではさらっと流し読みしつつ、5章以降を本格的に楽しみ、また大人になってから、改めてはじめからじっくり読み直す…というのもおすすめです。
子どもにとっては、やや退屈かもしれない1〜4章も、不思議と大人にとっては一つ一つの文章がとても心地よく、大人にしかピンとこないような抽象的な表現も楽しめます。
少しも取りこぼすことなく、味わいながら読みたくなる……この物語を隅々まで余すことなく楽しめるのは、いろいろな経験を経て、人生の解像度が上がった大人の方々かもしれません。
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