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oicchimouseの森の図書館員がめくるめく絵本の世界をご案内いたします。お子さまも大人の方もどうぞひと休みしていってくださいな。

おいっちまうすのひとくちポエム〈妖怪騒動の思い出〉

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〈妖怪騒動の思い出〉

 

 

 

今日は朝からしとしとと雨が降り続いている

 

 

そして 微秒に冷えている

 

 

朝 玄関で娘に上着を着ていくように促したが 

 

 

娘は拒否した

 

 

なぜなら もうランドセルを背負っていたため

 

 

ランドセルを下ろし 上着を着 再びランドセルを背負い直すという一連の動作を

 

 

面倒くさいと思ったからだ

 

 

さすがの横着娘だ

 

 

私は娘が背負ったままのランドセルを開け上着を入れようとしたが

 

 

タブレットやら水筒やらでいっぱいで入らない

 

 

ええい しゃらくさい はさみこんでしまえ

 

 

とランドセルのふたで無理やり上着をはさんで 金具をしめた

 

 

私もまた横着ものだ

 

 

娘は 出かけて行った

 

 

雨はしとしと降っている

 

 

こんな日には遠い昔を思い出す

 

 

といっても それほど昔ではないが…

 

 

 

あれはちょうど、今から7年前のことだ

 

 

今日のように 急に気温が下がり

 

 

一気に秋めいてきたように感じられた とある11月の土曜日

 

 

私は 何ヶ月か前に申し込んだ

 

 

とある大学の公開講座「妖怪講座〜怪異と私〜」(仮)

 

 

に参加するため 朝から心を踊らせていた

 

 

そして 主人に当時まだ赤ちゃんであった娘(少ししゃべる)を預け

 

 

準備万端で 出かけようとしたその時

 

 

「ぎゃあーーーーーーーーーーー」

 

 

娘が泣き出した

 

 

でも大丈夫

 

 

主人は今日一日しっかりと子守を引き受けたはず

 

 

責任の所在は主人にあり

 

 

「ごめんね ごめんね すぐ帰ってくるからね〜 行ってきまーす」

 

 

私が玄関のドアを開けようとすると

 

 

「ちょっとちょっと こんなに泣いてるのに行く気?」と主人

 

 

「いつもこんなに泣くんだよ 私は妖怪講座に行かねばならない あとはたのんだ」

 

 

「ちょっと酷すぎるよ せめて少し抱っこしてやって 落ち着くまで」

 

 

私は暴れまくる娘を抱っこした

 

 

案の定 泣き止まない

 

 

そりゃそうだ

 

 

この娘は一度泣き出したら最後

 

 

2時間はノンストップで泣き続けることができるという

 

 

妖怪並みの体力を持ち合わせた 赤ん坊なのだ

 

 

「このままでは間に合わないから 私はそろそろいくわ あとはたのんだ」  

 

 

「ちょっとちょっと こんなに泣いてるのに行かないでよ!」

 

 

「子守を引き受けたんだから 頑張ってよ!」

 

 

 

 

「……もう!妖怪と子どもどっちが大事なんだよ!」

 

 

 

 

 

『妖怪と子どもどっちが大事か』

 

 

 

 

 

こんな間抜けな質問をされた人がこれまでにいるだろうか

 

 

 

妖怪と子ども

 

 

 

「お茶とビールどっちが好きか」 と聞いているのと同じくらい馬鹿げた質問だ

 

 

 

そして そんなの答えは決まっている

 

 

 

私の一番の推し妖怪である〈あぶらすまし〉と比較しても

 

 

 

子どもの方が大事に決まっている   

 

 

 

ここで

 

 

「〈あぶらすまし〉の方が大事だ!」

 

 

 

と元気よく答える親御さんがいたらお目にかかりたい

 

 

 

「子どもの方が大事に決まってるけど 妖怪講座にあの妖怪で有名な京極夏彦先生がくることは滅多にないんだよ!京極先生を知らんのか!」 

 

 

「京極夏彦先生はまた何回でもきてくれるよ!」

 

 

「そんなわけあるか!」

 

 

 

 

 

 

 

それから約2時間が経過し 

 

 

娘は泣きやんだ

 

 

私は妖怪と京極夏彦先生を見るために全力で走った

 

 

大学の講堂に到着して席に着くと

 

 

舞台の上から ちょうど 京極夏彦先生が去っていくところだった

 

 

京極夏彦先生は 風情のある わびさび感満載のお着物を着ていた

 

 

まさに妖怪講座にふさわしいお着物だ

 

 

私は とぼとぼと会場を後にした

 

 

夕暮れ時の風が吹き

 

 

早くも日は沈みかかっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのとき あれほど泣いていた娘は

 

 

今やすっかり泣かなくなった

 

 

泣きたいことがあっても

 

 

転んでも

 

 

絶対に泣かないと決めているそうだ

 

 

「平安時代は男の人でも泣いていたんだよ 泣くのもまた趣深いといわれていたんだから 悲しかったらいつでも 好きなだけ 泣いたらいいんだよ」

 

 

私がこう言うと

 

 

娘は

 

 

「私は平安時代の人間ではない 令和の小学生だ」

 

 

と答えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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