【今日のおすすめ絵本】〈児童書〉(対象…小学校低学年から大人まで)
『おさるのキーコ』
著…今井 誉治郎
講学館
「お金ちょうだいよう。みんながキンギョかってるよ。はやくはやく。」
「みんながかっていても、おまえはかわなくてもいいのだよ。」
「そんなことないよ。ちょうだいよう。」
「みんなとおなじことをしなくてもいいのだよ。みんなと、おなじことをするのだったら、みんながしねば、おまえもいっしょにしぬのかね。」
「うん、しぬよ。」
キーコがこういったので、おかあさんはおこりました。
「ばか。そんなことをいうばかには、お金なんか一えんだってあげられない。」
キーコは、こういわれると、いきなりじめんにひっくりかえって、足をばたばたさせて、わあっとなきだしました。
そのこえは、きんじょにひびきわたるような、とても大きなこえでした。
(本文ママ 『おさるのキーコ』〈ホタルなんかいらない〉より抜粋)
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↑「みんなとおなじことをしなくてもいいのだよ。みんなと、おなじことをするのだったら、みんながしねば、おまえもいっしょにしぬのかね。」
「うん、しぬよ。」←(えっ!)
キーコがこういったので、おかあさんはおこりました。
お母さんの極端すぎる例えと、ストレートすぎるキーコちゃんの返しに度肝を抜かれます。
こちらの本にはおさるのキーコちゃんの、一年生から二年生までのお話が書かれています。
友達のキャーキチ、ノボル、ユスル、アカコ、担任のサルタせんせいや、キーコのかあちゃん、とおいところからかえってきたとうちゃん、友達のおとうさん、おかあさんなど、豊かな人間関係のなかで、キーコはすくすくと成長し、何気ない日常の中から様々な大切なことを学んでいきます。
子どもも大人もお行儀がいいと思ったら急に口が悪くなったり、とんでもない屁理屈を言ったり、なかなかシュールなストーリーですが、それが妙にリアルで、小さい頃に似たようなことがあったなぁと思い出したり、娘が学校から帰ってきて汗だくになりながら話してくれる「今日の学校での大事件」がお話に重なったりします。
教育方針やさまざまな事情ですべてをキーコちゃんの希望するままに叶えてあげることはできないけれど、別のことでさりげなく代替したり、うまくフォローしたりして、愛情深く子育てしているお母さんとお父さん。
そして家族全員がピンチのときには、先生も助けてくれます。
こちらの本、昭和の昔は学校の図書室に大抵置いてあって、子どもたちの間でいつも取り合いになるほどのすごい人気だったそうです。
あまりに読まれすぎて常にボロボロで、学校は2回、3回と買い替えることも多かったとのこと。
小さい読者が夢中になる全てが詰まっているのですから、それも納得です。
時代背景の違いはあれど、おさるのキーコちゃんの学校での日常は人間の子ども達の日常そのものなのです。
ストーリー展開や大人と子どもの絶妙にリアルな掛け合いが非常に面白く、読みだすと子どもの手が止まらなくなります。
キーコちゃんをとりまく大人側からの目線もとても丁寧に描かれていて、作者が、悩み多き子育て中の大人の気持ちにも優しく寄り添ってくれていることがよく分かります。
現在残念ながら絶版ですが、図書館や図書館の保存庫には眠っている可能性が高いので、もしよろしければ図書館の検索機or図書館員さんにたずねてみてください。
この本は絶対に世の中からなくなってはいけない本だと思うので、どうにか復刊してもらいたいものです(>_<)
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