【今日のおすすめ絵本】(対象…小学校低学年〜大人まで)
『カッパの生活図鑑』
文・絵…ヒサ クニヒコ
国土社
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(あらすじ)
秋になってくると、子どもたちの体もずいぶんと大きくなって、敵が来ても身を守れるようになってきます。
そして、いよいよ冬眠の準備をしなければなりません。
その年に生まれた子どもたちは、それぞれの家族といっしょに冬眠します。
春が来ると家族とはなれ、若者同士で暮らすことになります。(本文より)
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カッパといえば夏のイメージですが、カッパは、春夏秋冬、日々普通に日常を送っています。
その生活様式は、どことなく旧石器時代の人類と非常によく似ています。
昔話の中に、夜中トイレに行くと、正体不明の手にお尻を撫でられたので、驚いて刀で切り落とすと、翌日の晩にカッパが、腕を返して欲しいと訪ねてきたので返すと、お礼にカッパが薬をくれた、というものがありますが、そこに登場する「カッパの薬」の作り方も載っています。
「カッパの分類」という項目では、カナダの恐竜学者D・ラッセルさんが、提唱した「恐竜が絶滅せずにそのまま進化しつづけた場合、『恐竜人間』になり、その姿はカッパと非常に似ている」という恐竜起源説とともに、『恐竜人間』とカッパの比較イラストが掲載されており、非常にロマンがあります。
ヒサクニヒコさんは、この図鑑を通して、カッパが住めるようなきれいな水の流れる自然を守っていかなければならないと、読者に訴えかけています。
汚れた排水は、カッパにとって毒になり、カッパの長老直伝の妙薬も効かないのです。
民俗学では、妖怪は「土地に憑くもの」、幽霊やお化けは「人に憑くもの」と定義されていますが、「憑く」ための土地がなくなってしまっては妖怪も妖怪ではいられません。
街中に身を置いていると、人々の意識の中で、カッパはキャラクターとしてのカッパの域を出ることはありませんが、たまに奥深い山に入って行き、深い緑に囲まれた薄暗い池のそばを通ると、「これは、カッパが出ても何の違和感もないなぁ」と思うことがあります。
実際に、姿を見たかどうかは問題ではなく、そう感じることができたということ自体が「妖怪としてのカッパの実在」なのだと思います。
カッパだけではなく、妖精でも神様でも仏様でも、目に見えないものを無理なく「実在」として捉えられるような豊かな自然を、後世に遺していきたいものですね。