【今日のおすすめ絵本】(対象…小学生から大人まで)
『町のけんきゅう』
岡本信也・岡本靖子=文・絵
伊藤秀男=絵
福音館書店
(あらすじ)
わたしのお父さんとお母さんは、町のけんきゅうをしています。きょうは、お父さんとお母さんといっしょに近くの町を歩いて、わたしもけんきゅうをしました。
(本文ママ)
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3人は、「なにか、おもしろいもの」を探して、町をうろつきます。
「わたし」は飲食店のショー・ウインドウを見ながら「カレーライスとカレーを使った食べもの」を研究しました。
カレーライス、カレーライス半熟卵付き、カレーとライスが別々のもの、カレーきしめん、カレー丼、カレーラーメン…。フィールドカードにそれぞれのイラストを描いて、その特徴や金額も書き込みます。
お父さんは地面に落ちている「カンのふた」の研究にのめり込んでいます。
今では見かけることが少なくなった昭和・平成世代懐かしの「プルリング」です。お父さんは、カンのふたが落ちていた場所や、ふたの壊れ方(ちぎれている、傷がある、曲がっている、サビ具合…等)、ふたのデザインや特徴まで入念に調べました。
カンのふたも丁寧に並べるとまるで貴重な標本のようです。
お母さんは、「もの干し台や干し方」の研究です。
お母さんは、団地のベランダやよその家の軒先をじっと観察しています。布団などの大物はなかなか干す場所に困りますが、その個性的な干し方の数々には主婦の方々のセンスと熟練の技がきらりとひかります。
布団をベランダや屋根に干すといったオーソドックスな干し方から、自転車の前カゴに座布団、サドルから荷台にかけての部分に布団をかぶせる方法、自動車の上に毛布、植木鉢に棒を立てて棒に靴を挿して干す方法から、なんとなんと道端の電柱に洋服を吊るして干すといったツワモノまで…。
3人はこの他にも、飽くなき好奇心からたくさんの研究をします。
私が特に心惹かれた研究はこちら⬇︎
●「もの売りの声」の研究
●「おばあさんのはきもの」の研究
●「電車のなかでのすわり方・しぐさ・つりかわの持ち方・足の組み方・かさの持ち方」の研究
●「なかよしカップルの手のつなぎ方」の研究
●「おじいさんたちの頭」の研究(調査結果:グレー99人、白髪33人、毛が薄い黒髪108人、毛が薄い白髪51人、毛がない22人)
こういった研究のことを「考現学」というそうです。
巻末の作者の「あとがき」によりますと、
考古学=古い時代のことを調べる学問。出土品や石のかけらなど、普通の人には何の価値もないような古いものや、遺跡などから、過去の人間の生活、暮らし、文化を研究するもの。
考現学=考古学の現代版。現在の人の暮らしや風俗を、観察・採集し、ありのまま記録し、研究するというもの。大正時代末期に日本で始まった。
と書かれています。
この本が最初に書かれてから(1993年)、また随分と私たちの暮らしも様変わりしていますので、今だとまた違った考現学の研究ができそうですね。
週末、散歩がてらお近くの町でぜひ「町のけんきゅう」をされてみてはいかがでしょう。
思わぬ発見があるかも?
夏休みの自由研究にもおすすめです⬇︎