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oicchimouseの森の図書館員がめくるめく絵本の世界をご案内いたします。お子さまも大人の方もどうぞひと休みしていってくださいな。

Once upon a time…『知られざる昔話の世界』

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こんにちは。oicchimouseです。

 

 

みなさんは、日本には昔話がいくつくらい存在しているかご存知ですか?

 

 

桃太郎、一寸法師、浦島太郎……。実は、絵本になっているような有名な昔話は数多ある昔話のほんの一部。

 

 

関敬吾氏著の『日本昔話大成』には、約34000〜35000。

稲田浩二氏・小澤俊夫氏によって『日本昔話通観』にまとめられた昔話の数は6万話にのぼります。

 

 

また、上記のような学者の方々によって収集されていない埋もれたままの昔話も含めると、実際の数は、これらをさらに上回るものと思われます。

 

 

 

昔話の世界は非常に奥が深く、国内のあちこちに数えきれないくらいの類話があったり、それが国外の様々な国々ともつながっていたりと、読めば読むほど興味が深まっていく、非常に面白いものです。

 

 

 

そこでおすすめなのが、小澤昔ばなし研究所から出版されている、『子どもに贈る昔ばなし』のシリーズです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは昔話本来の、単純で明快な語り口を守った再話の方法を習得した人たちが、子どもに贈る昔ばなし集です。

(絶版になっているものや、中古で価格が高騰しているものもあるのが残念です…。)

 

 

 

収録されている昔話をちょっとご紹介。

 

「鬼を買った夫婦(愛知)」

『がまの皮』より

むかし、あるところに、お百姓の夫婦がいた。

ある朝早く、まだふたりが寝ていると、「鬼はいらんか、鬼はいらんか」という声がした。

 

(まあ、めずらしい)と思って外に出てみると、男がいっぴきの大きな赤鬼をかごに入れて売りあるいていた。

 

「鬼を売ってどうせるだ」と、たずねると、男は、「この鬼はめしだけ食わしとりゃあ、どんな仕事でもしてくれる。朝早くから畑でも田んぼでもつれていきゃあ、いっしょうけんめいはたらくで。金はいくらでもいいで」といった。

 

夫婦は、「ほいじゃ、仕事がつかえて、草ぶかでこまっとるで、そんないい鬼ならひとつもらっとこうか」といって、その鬼を買うことにした。………

(冒頭本文ママ)

 

 

「きんぷくりんとかんぷくりん(和歌山)」

『きんぷくりんとかんぷくりん』より

 

(あらすじ)

昔、あるところに代官がいました。

代官のところへ漁師が魚を1匹持ってきました。

 

ところが、代官は魚の名前がわかりません。

漁師も、初めてとった魚なので名前がわかりません。

 

そこで、代官は「魚の名前を知っているものには五両のほうびをとらせる」と書いた張り紙をあちこちに出しました。

 

すると、一人の男が名乗り出て「代官さま、これはとてもめずらしい魚です。名前は『きんぷくりん』です。」と言いました。

 

代官は変な名前だと思いながらも、男が名前を知っていたので、ほうびをとらせました。

 

しかし、男が、帰ってからよくよく考えてみると、やっぱりおかしい。

 

「『きんぷくりん』などというおかしな名前、あるはずがない。」

 

代官はしばらくしてから男を呼び出して、もう一度魚の名前を聞くことにしました。同じ名前を言わなかったら、ほうびをとりあげて、こらしめてやろうと思ったのです。

 

月がたって男が呼び出され、また代官から魚の名前を聞かれました。

 

しかし、男はでたらめに言った名前だったので思い出せません。

 

(「ぷくりん」とか「ぽくりん」とか言ったんだけど上につけた言葉が思い出せない。また、でたらめを言っておこう)ということで、「代官さま、この魚は『かんぷくりん』という名前です」と言いました。

 

すると、代官は「この前は、『きんぷくりん』と言ったのに、この嘘つきが!」と激怒し、男は、打首になることになりました。

 

申し開きも一切聞いてもらえないので、男は、「息子と最後の別れをさせてください」と代官に頼みます。

 

 

息子が連れてこられました。

 

男は息子に言いました。

 

「おれはな、はじめ『きんぷくりん』といった魚を、こんどは『かんぷくりん』といったので打ち首になってしまうのだ。

申し開きは、いっさい聞いてもらえん。

だけど、おまえよく聞いておけ。

いかは、ほしたらするめになるんだぞ。

魚は、なまものと、ほしたものと名前が違うこともあるのだ。

おれは、その名前をちがえていったばかりに、打ち首になるんだ。

いいか、いかがするめになるということもあるんだぞ」

 

代官はこれを聞いて……。(続く)

 

*「きんぷくりんとかんぷくりん」は原文そのままではなく内容を要約しています。

 

 

 

いなかのお年寄りによって語り継がれてきた、お年寄りの語りは、耳で聞かせるために研ぎ澄まされたもので、その語り口について学んだ方々が再話しているため、絵本のように絵がなくても子どもがお話を想像しやすく、ストーリーが言葉と共に体に沁み込んでくるのです。

 

 

毎晩寝る前にこの中のお話を語っていると、3分ほどのお話でも、子どもが一字一句違えずすっかり覚えてしまいます。

 

 

そして、今度は覚えたものを他の人に語り出します。面白いことに、回数を重ねるごとに、語る調子も滑らかになっていきます。

 

 

昔々の日本でも、このような単純で明快な語り口のおかげで昔話が各地に自然と伝わっていった様子が想像できます。

 

 

 

面白さの中に、どこかミステリアスな雰囲気もただよう昔話の世界。

みなさんもぜひ楽しんでみてくださいね。

 

oicchimouse.com

 

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