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oicchimouseの森の図書館員がめくるめく絵本の世界をご案内いたします。お子さまも大人の方もどうぞひと休みしていってくださいな。

奇妙で不思議な〈通り雨型〉絵本『むこうのかどをまがったら』

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【今日のおすすめ絵本】(対象…2歳頃から)

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『むこうのかどをまがったら』

梅田俊作・佳子

あかね書房

 

(あらすじ)

「えきまで おとうさんを むかえに いって」だなんて、おかあさん どうかしてるよ。

あめなんて ふりそうに ないのに。テレビゲーム、おもしろいとこだったのになあ。

 

かどを まがると、ちょうちょが いちわ むこうの かどを まがっていきました。

 

ぼくが そのかどを まがると、ちょうちょは つぎのかどを まがるところです。

ぼくも いそいで かどを まがりました。すると……

(本文冒頭ママ)

 

 

ぼくは、お母さんに頼まれてお父さんを迎えに行くことになりました。

 

ぼくが、「むこうのかどをまがったら」いろいろなものに出会います。

 

予想だにしない不思議なものや景色に出会います。

 

 

 

いないないばぁのように、現れてはサッと消え、また現れてはサッと消え…。

 

消えるときには何事もなかったかのように消えるのです。

 

 

 

幼いこどもの文学は「行きつ戻りつ」(登場人物がどこかに行っても必ず元の場所に帰ってくる。もしくは想像の世界から現実の世界に戻ってくるものに安心感をおぼえる。)といわれますが、この行きつ戻りつが、ストーリーの中で何度も何度も繰り返されます。

 

非常に画期的です。

 

 

 

見えない場所から何かが次々出てくるという絵本は他にもありますが、こちらは少し趣きが異なり、最近よく見かける「奇をてらったナンセンス絵本」とは一線を画します。

 

 

スライドをみているように場面ごとの切り替わりにメリハリがきいているのです。

 

 

これは、きっと梅田さんの画力によるものです。

 

 

モノトーンに黄色を少しだけ配した水墨画のような味わい深いタッチで描かれ、現代のお話ですが、やや和風で古風な感じもする絵本です。

 

 

そういえば、「曲がり角」という言葉には、そもそも以下のような2つの意味があります。

 

まがり‐かど【曲(が)り角】
読み方:まがりかど

1 道などの曲がっている所。道などの折れ曲がっている角。「この先の—で折れる」

2 新しい状態などに変わる、変わりめ。転機。「運命の—」

『デジタル大辞泉 小学館』より

 

こちらの絵本では、1と2の両方の意味が絵とストーリーの中に自然に組み込まれて一つになることで、現実の世界と想像の世界の自然な橋渡しが可能になっているのです。

 

 

 

また、曲がり角といえば、日本では古来より(道が交差した場所)に棲みつく辻神の話や、小野篁が冥府との往復を果たしたという京都の六道の辻の話など、「辻はこの世とあの世の境界」と信じられてきた歴史があります。

 

 

この絵本で描かれる曲がり角に、読み手が何か不思議な魅力を感じるのはこういったイメージも多少影響しているのかもしれません。

 

 

みなさんも、曲がり角の先にある不思議な世界を、ぜひ楽しんでみてくださいね。

 

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