昨日、今年度に入って初めての小学校朝の読み聞かせ(3年生)に行ってきました。
今年はクラスが荒れ気味と聞いていたので、どうしようかな〜、何を読もうかな〜、と前日までかなり悩みました。
結局、難しい年齢の子どもたちの興味を強く惹きつけ、等身大でお話の世界に入っていけるような作品で、なおかつ文学的にもすぐれているもの…。ということで、わが家の家宝『おさるのキーコ』を持って行くことにしました。
児童書のため、持ち時間10分で読み切るのは不可能なので、この中から3話抜粋して読むことにしました。(ストーリーは全部つながってはいるのですが、もともと雑誌に連載していたものなので、1話ごとに一応完結します。)
選んだのは…
●[ねだらないやくそく]
●[おとうさんのあほ、たわけ、おたんちん]
●[おとうさんのおりこう]
の3話です。
3話合わせて8分ということで、時間内に終われるかどうか、かなりギリギリの綱渡りです。本来は余裕を持った時間配分で読める本(スタンバイの時間も考慮して6分程度で読める絵本またはお話)を選ぶのがベストなのですが。
「おはようございます。」と教室に入っていくと、すでに教室内はざわざわとざわめいておりました。とりあえずやんちゃキッズたちを静まらせなければ…。
私は読み聞かせに入る前の導入の手遊びなどが恥ずかしくて苦手です。なんならそれ以前に大きい声で「はーい、静かにしてくださーい!」的なことを不特定多数の人々に向かって叫ぶのも苦手です。(そんな小心者がなぜ読み聞かせのボランティアなんかやっているのか、と思われるかもしれませんが、「素晴らしい作品を子どもたちに紹介したい」という熱い思いだけはあるのです。)
そういうわけで、お話の世界に入ってもらう合図としてこんな小道具を持っていきます。⬇︎これは、『オルゴールボール』というものです。『メルヘンクーゲル』ともよばれています。
紀元前ヨーロッパの古代ケルト民族が使っていた『ドロイドベル』とよばれる鈴が、20世紀初めにドイツ人の銀細工師たちによって復元されたものです。仕組みは普通のオルゴールと同じです。手の上で転がしたり、指でつまんで軽く振ると、とても美しい音がなります。(私が使っているのは20mmのものですが、50mmだと低い音が出るそうです)
ざわつく子どもたちに向かってこのオルゴールボールを振ってみるとあら不思議。
「それ、何〜?」「めっちゃきれいな音してる〜」前の方に座っている何人かが気づきました。「教室の一番後ろの子までみんな音が聞こえるかな?」というと、オルゴールボールの小さな音を聞こうとみんな耳をすませます。
そして結果的に教室は静まり返り、オルゴールボールのささやかな音色だけが教室に響きわたりました。
作戦大成功です。
[ねだらないやくそく]は、いつも物を買って買ってとねだるおさるのキーコが、ねだらないことを条件にお母さんの買い物についていき、物欲と葛藤するお話。
[おとうさんのあほ、たわけ、おたんちん]は、出稼ぎのため遠くに住んでいるおとうさんからキーコあてに手紙がきたのをはじまりに、キーコが学校で先生のいうことを聞いていないと誤解したおとうさんが「いうことを きかん こどもが、いちばん ばかで、あほで、たわけで おたんちん」とキーコに手紙を出し、これに対してキーコが、「おとうさんの ばか、あほ、たわけ、おたんちん」と返事を送るお話。
[おとうさんのおりこう]は、喧嘩中のおとうさんに「お土産を買っていってやらない」、と言われたキーコが、学校の先生に相談し、「おとうさんは、おりこう。おとうさんは、かんしん。おとうさんは、かしこい。」と手紙を書き、無事お土産を買ってきてもらえたお話。
ちなみに子どもたちが異常に食いついた「おたんちん」という言葉は、「まぬけ」という意味だそうです。
「おとうさんもそこまで言うことないのに〜」などの感想や笑い声もありつつ、おとうさんに理不尽に怒られたキーコが悪口で応酬する姿にみんな自分を重ね合わせているようで、嬉しそうでした。そして何より、どの子もこの子もやんちゃな子もとても真剣な生き生きとした眼差しで聞いてくれていました。
作者の方が元教師で、キーコのお話も、現実の子どもたちや保護者、先生のエピソードをもとに書かれているだけあって、この物語をよりリアルに感じられたのかもしれません。
一般的な絵本や児童書とは少し毛色の異なる作品ですが、やはり力のある作品はいつの時代も子どもの心をとらえて離さない魅力があることを実感しました。
ギャングエイジといわれる小学3年生ですが、やんちゃでおませなところもありながら、まだまだ小さい子の雰囲気も残していてなかなか面白いものです。
教室のわが子をちらっと見ると、1年生の時は「お母さん来た〜」といってたのが、目線をそらして「スン」っとなっていましたが笑