【今日のおすすめ絵本】(対象…2歳から)
『とらたとまるた』
なかがわ りえこ ぶん
なかがわ そうや え
福音館書店
(あらすじ)
まるたがいっぽん、ひろっぱに ころがっていました。
とらのこの とらたが やってきて、「あ、うまだ」といいました。
「そりゃ、もちろん わたしは うまだ」と、まるたは いいました。
とらたは、うまに またがりました。
まるたは、げんきよく かけだしました。
ぱっぱか ぱっぱか
(本文ママ)
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中川李枝子、中川宗弥、夫妻による『とらたとまるた』。
丸太一本あれば、豊かな想像力でどこまでも行けてしまう素敵な子どもたちの姿がいきいきと描かれています。
「うま」と言われれば馬に、「カヌー」と言われればカヌーに、次々と姿を変える素直な丸太は、とても柔軟で躍動感にあふれています。
そして丸太は、その都度姿を変えますが、何に変身してもしっかりと丸太の原型をとどめているのです。
(この描き方が、一本の丸太を通して現実の世界と想像の世界を巧みに行き来できるこの年齢の子ども特有の心理状態を絶妙に表現していて本当に素晴らしいと思います。)
それから、途中から登場する、とらたの友だちの「とらこ」。
ビジュアルは、とらたと全く同じなのに、赤のポシェットを身につけているというだけで、完全に「とらこ」になっているところがおもしろい。
ここから先は友だちのとらこも巻き込んで、とらた、とらこ、丸太、の3人体制です。
1人の子どもが作り出した1つの想像の空間に、友だちが入り込んできて、その中で一緒に遊ぶ。
よくよく考えると「子どものごっこ遊び」というのは、いわば異次元の空間を一時的に他者と共有することであり、それって実はかなりすごいことなんではないかと思います。
とらたととらこが帰り、まるたは普通の丸太に戻りますが、「また あした、あそぼう」の絵本の最後のセリフが、明日もまた丸太と一緒に遊ぶことができる楽しい一日であることを示唆していて、嬉しい余韻が残ります。
「遊び」一つとっても、今はいろいろと便利なものがあふれすぎていて、目の前に転がる大きな丸太一本に目を輝かせることができる子どもがどのくらいいるのだろうか…と、たまに心配になりますが…。
子どもたちが、とらたのように、1本の丸太に目を輝かせて、いきいきと遊ぶことのできる環境を私たち大人は守っていかないといけないんじゃないだろうか、と思う今日この頃です。