【今日のおすすめ絵本】(対象…低学年から大人まで)
『ふうせんばたけのひみつ』
ジャーディン・ノーレン 文
マーク・ビーナー 絵
山内智恵子 訳
徳間書店
(あらすじ)
「ハーベイ・ポッターって、すごくかわってるんだよ。
おひゃくしょうしてるのは、みんなといっしょだけど、そだててるものが、ぜんぜんちがうの。
ほんもののふうせんのうじょうをやってるんだ。
お役人だって、ちゃんと見にきたんだから。
どうやって、ふうせんなんか生やせるのか、だれにもわからなかった。
そんなの、手品にきまってるじゃないかっていうやつらもいたけど、あたしは、ちゃんと、この目で見たのさ。
いんちきなんかじゃない。
そこらへんのふつうの地面から、ほんもののふうせんが、にょきにょき生えてくるんだ。」(本文ママ)
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この絵本の感想をどのように書けばよいのか、悩みます。
とてもワクワクして、胸がドキドキして、読み終えると例えようのない満足感で心が風船のように満たされます。
他に類を見ない魅力的で個性的なストーリー。
何かを語るのは野暮なような、何を語っても足りないような、そんな気がします。
ジャーディン・ノーレンさんの紡ぎ出す独特のストーリーや世界観が、マーク・ビーナーさんのダイナミックな絵によって、現実世界ギリギリの領域にまでぐいぐいと迫ってきます。
絵本の中では、とても不思議なことが起こっているのだけれど、まるでファンタジーではないような。
少し手を伸ばせば、つかめそうなファンタジーとでも言いましょうか。
モーリス・センダックの絵本が大好きで、暗記するほど読んだというマーク・ビーナーさんですが、印象的な影の描き方や、絵の構図、アングルが非常に特徴的で、ページをめくるたびに、読者は、まるで自分が絵本の中に生きて、その現場をまさに今目撃している登場人物の一人のような気分になってしまいます。
見開き一面に広がる風船畑は、圧巻です。
ストーリーには全く関係ありませんが、空に浮かぶ雲も、時々、沢山の動物の形になっていたり、そうかと思えば次のページでは完全に普通の雲に戻っていたりと、遊び心も満載。
そして、ラストシーンが近づくにつれて…
「え…!?」
そういうことだったのか!!
驚きと、なんともあたたかな心地よい鳥肌が立ちます。
夢がたっぷり詰まった大きな風船と、進むべき道を無事収穫した女の子の不思議な物語です。
絶版・希少で、やや入手困難ですが、図書館カウンターでお願いすると、他府県の図書館からも取り寄せしてもらえますので、ぜひぜひ手にとってみてくださいね。
ちなみに、私は図書館で他府県から取り寄せしてもらって読んで、どうしても手元に置いて繰り返し読みたくなってしまったため、アマゾンの中古本で購入しました。⬇︎