【今日のおすすめの本】(対象…高学年から大人まで)
『不思議を売る男』
ジェラルディン・マコーリアン 作
金原瑞人 訳
佐竹美保 絵
偕成社
(あらすじ)
エイルサが図書館で出会った奇妙な男。
男はひょんなことからエイルサの母親が営む古道具店で働くことになります。
男は、お給料を欲しがらず、「ほんのちょっと食べるものがもらえて、店にある本を自由にみせていただければ十分ですから」と言うのです。
はじめは不審に思っていたエイルサ親子ですが、男の商売のうまさに次第に魅せられていきます。
男は、まことしやかにそれぞれの古道具の由来を客に語って聞かせ、客をその品物に夢中にさせるのです。
本の国から来た不思議なストーリーテラーが語る様々な魅惑の世界に、登場人物のみならず読者もいつしか惹き込まれていきます…。
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1988年にイギリスで出版され、カーネギー賞とガーディアン賞の二つを受賞した本作。
翻訳を担当された金原瑞人さんが「現代の『アラビアンナイト』」、「一つの章だけでも、ふつうの本十冊分の値打ちがある」、「珠玉のような短編」と大絶賛されているように、こちらの作品は、読者に読むことの楽しみを最大限に味わわせてくれる名作です。
最終章では「不思議を売る男」の正体が明らかになるのですが、ここには意表を突く驚きと何ともいえない感動があります。
最終章までのあの出来事は一体なんだったのか。一夜の夢から覚めたかのような不思議な読後感です。
「どうか、途中をとばして十三章を読んだりしないよう、くれぐれもお願いします。そして読みおえたあと、けっしてほかの人に、最後を教えないように。」(訳者あとがきより本文ママ)
大人の方にもおすすめのとっておきの一冊です。
ストーリーの沼に沈んでゆく心地よい読書体験を、ぜひ味わってみてください。
第1章 本の国からきた男
第2章 大時計【迷信の話】
第3章 寄せ木細工の文具箱【嘘つきの話】
第4章 中国のお皿【大切なものの話】
第5章 テーブル【大食漢の話】
第6章 ハープシコード【誇りと信頼の話】
第7章 傘立て【かんしゃくもちの話】
第8章 鏡【虚栄心の話】
第9章 ロールトップ・デスク【犯人探しの話】
第10章 木彫りのチェスト【いつわりの話】
第11章 鉛の兵隊【誇りの話】
第12章 ベッド【口にするのも恐ろしい話】
第13章 答えはひとつ