oicchimouseのおいっち・にー・さん・しー

oicchimouseの森の図書館員がめくるめく絵本の世界をご案内いたします。お子さまも大人の方もどうぞひと休みしていってくださいな。

『子どもと本のマッチング』〜対象年齢についての考察〜

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こんにちは。

お久しぶりです、oicchimouseです。

 

さて、今日のテーマは『子どもと本のマッチング』

 

具体的には本の対象年齢についてお話ししていきたいと思います。

 

子どもに何か本を選んであげようと、一冊手にとると、そこには対象年齢が書いてあります。

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「読んであげるなら〜歳から」「自分で読むなら〜歳から」という表記のものもあれば、ただ「〜歳から」「〜年生以上」とだけ書いてあるものもあったり、そもそも対象年齢自体書かれていないものもあります。出版社によって少しずつ異なります。

 

この、〈本に表記されている対象年齢〉は、あくまで手にとる時の目安。読んで(または読み聞かせてもらって)楽しめたなら、実年齢が上でも下でも、その子にとって今がその本の対象年齢だった、というわけなのです。

 

つまり、本当の対象年齢は、子どもがその本を読んだあとに分かるものだと、私は考えています。

 

そして、それは子どもによって本当にまちまちです。ですから「もうこの本の対象年齢になっているのに楽しんでいない」とか「小さい子が対象の本ばかり好んでいる」などの心配は全く必要ないのです。

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以下は、『子どもと本のマッチング』を考える上で私が判断材料にしている3つの年齢です。

 

1.出版社が表記している対象年齢

これは、あくまでたくさんある本の中から一冊手にとるときの目印に使うだけです。

(現在小3の娘の場合だと、〈中級から〉と書かれているものを中心に手に取りつつ、〈初級から〉〈上級から〉のものも目を通します。)

 

2.子どもの読解年齢

この〈読解年齢〉という言葉は私の完全な造語なのですが、『読んで(または読み聞かせてもらって)、話の内容を理解できる年齢』という意味で使っています。

 

3.子どもの精神年齢

これは、そのまま。子どもの〈心の年齢〉のことです。本に関していうと、『読んで(または読み聞かせてもらって、話の内容を理解し、楽しめる年齢』という意味です。

 

『子どもと本のマッチング』に一番大事なのは、この読解年齢精神年齢です。

 

例えば、読書習慣のある子の場合ですと、読解年齢が高いので、難しい本も読むことができます。すると、親御さんは実年齢より高い対象年齢の本を読んでもらいたくなるかもしれません。

 

科学系や知識系の本であればそれでなんの問題もありませんが、小説や物語の類いとなると、どうでしょう。

 

読解力があるので、読んで理解することはできるでしょうが、精神年齢が追いついていないと共感したり、その本のもつ本当の良さは味わうことができません。

 

例えば極端な話ですが、小学校低学年の子に、「就職に失敗し、成功したかつてのバイト仲間を密かに妬み続ける中年男性の屈折した気持ち」(某純文学作品より)は、読めたとしても、おそらくその心情を本質的には理解できないでしょう。

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歴代の作家の方々が身を削りながら世に出した本の数々ですから、精神年齢が追いついていない段階で作品を上辺だけで消費するのはとても勿体ないことだと思います。

 

機が熟したときに、読んでこそ本の価値が最大限に生かされるのです。

 

そしてまた、例えどんなに聡明で、読解年齢が高くても、精神年齢は実年齢にほぼほぼ沿ったスピードで成長していってもらいたいな、と思います。

子どもが子どもでいられる時代は意外と短いものです。特に今の子どもたちは、まともに子どもとしての時間を謳歌できないままに大人になってしまっているようなケースが多い気がします。

 

 

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【『子どもと本のマッチング』ポイント】

 

●子どもの様子をよく観察する。

 

●何に興味があるのか。

 

●子どもを現在とりまいている環境はどんなものか。(幼稚園保育園、学校、習い事、友だち…)

 

●出版社の記す対象年齢の本で、子どもが興味を持ちそうなテーマの本を渡したり、読み聞かせたりしてみる。(小学生だと『学校』がテーマのものは比較的身近で興味を惹かれやすい)

 

●子どもの読解年齢、精神年齢の両方を満たしている本。

ひらがな、漢字などの文章表記は気にしません。

習っていない漢字ばかりの本でも、親が読み聞かせると意外と内容が優しく小さい子でも楽しめるものもありますので、見るべきは内容です。

 

●20ページ読んでも、子どもが楽しそうでなければ、その本はまだ子どもにとって対象年齢ではない、または、そもそも好みでない、ということなので、子どもに確認した上で読むのをスパッとやめる。

(洋服を次々と試着するイメージです。「せっかく買ったから借りたから最後まで読まないと!」とこだわらずに、気軽に読んではやめ、読んではやめ、したら良いのです。無理に最後まで読むのは苦行でしかありません…)

そのうちに、親のほうでもなんとなく自分の子どもだけの程よい対象年齢の本が分かってきますし、好みも分かってきます。

 

●途中で読むのをやめた本は、しばらく本棚で寝かせておきます。去年、反応が薄くて途中で読むのをやめた本を、今年は子どもが涙を流しながら感銘を受けて読んでいる、ということもよくあります。

 

◎子どもと本の出会いは、人と人との出会いとよく似ています。全然気が合わない人を連れてこられて、友達になれと言われても難しいのと同じで、子どもと本もうまくマッチングしてこそ、本と友達になれるのではないでしょうか?

 

みなさんも、ぜひ子どもさんと一緒にぴったりの本を探してみてくださいね。

 

では今日はこの辺で…。

 

 

 

追記…ちなみに昔話は対象年齢の幅が広いので、比較的どの世代でも楽しめる優れものです。

本探しに困ったときは昔話もおすすめです。

 

 

 

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