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oicchimouseの森の図書館員がめくるめく絵本の世界をご案内いたします。お子さまも大人の方もどうぞひと休みしていってくださいな。

『夏休みに読みたい絵本10選』後編

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『夏休みに読みたい絵本10選』後編

 

こんばんは。寝てる間に足の甲を2箇所蚊に刺されて、かゆいかゆいoicchimouseです。

 

今日は、前回からの続き、『夏休みに読みたい絵本10選』後編です!

 

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⑥『ガンピーさんのふなあそび』

ジョン・バーニンガム さく

みつよし なつや やく

ほるぷ出版

舟を一そう持っているガンピーさん。舟で出かけたガンピーさんに、途中、子どもたちや動物たちが次々と「いっしょにつれてって」「わたしもいっしょにいっていい、ガンピーさん?」と声をかけてきます。

そのたびに、ガンピーさんは、「いいとも。〜さえしなけりゃね」と条件付きで許可します。舟が満員になったあたりで、みんなが約束を破りはじめ、ついに舟がひっくり返って……。

 

ウクライナ民話『てぶくろ』と同様、限られたスペースに次々と人数が増えていくスタイルのお話です。子どもの好きな繰り返しと、舟がひっくり返ってみんな落ちてしまうハプニング。その後の展開もとても爽やかです。

 

見開き左側に、舟が進んでいく様子がモノクロ(こげ茶色)で描かれ、右側に、新たな登場人物がカラーで描かれています。

水辺に生い茂る草や、涼しげな舟遊びの様子が、暑い夏の日に心地よい清涼感を与えてくれます。

 

 

⑦『とべコウタ』

吉岡 一洋 作

福音館書店

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コウタは毎日近所の友達といっしょに海に遊びにいきますが、怖くて、みんなのように、岩の上から上手に海へと飛びこんでいくことができません。

 

くやしがっていたコウタは、大将のクンタンに手をひっぱられ、岩からはじめて飛びこみました。耳が痛くなり、塩辛い水も飲んで、怖い思いもしましたが、一度飛びこめたことでコウタは少し自信がつきます。

 

浅瀬で頭を水につけて目を開ける練習をしてみると、水の中にはいろいろな生き物が見え、目も痛くありません。

うれしくなったコウタはみんなのところに走っていき、今度は、ひとりで岩から海に飛びこむことに成功します。

 

見開き一面に、引きのアングルで描かれている場面の海は、美しい青色なのに対し、岩からの飛び込みの場面で、海が目前にせまっているときには、海の色はどこか不安を感じさせるような深い緑色で、泡立つほどに波立っています。

 

海で泳いだことのある人は、この色合いの差(遠くから見る海と、目前に対峙したときのリアルな海の印象の差)をどこかで感じたことがあるはずです。

 

海は美しく、同時に恐ろしいものであること。また、恐ろしいものであると同時に、いろいろな魅力的な表情を見せてくれること。仲間とともに、子ども時代のかけがえのないひと夏を、全身全霊で駆けぬけることの素晴らしさ。

 

海に挑んでゆく子どもたちは、生命の象徴であるかのごとく、肌や筋肉が健康的に輝き、目には力が宿っています。躍動感のある絵からは、子どもたちの息づかいや、潮の香り、波の音、太陽で温まった岩のぬくもりまで伝わってくるようです。

 

一昔前には当たり前だった、「子どもたちだけでの特別な夏の遊びのシチュエーション」は、現在では、さまざまな事情から難しくなっていますね。

 

こちらの作品は、こういった経験の少ない現在の子どもたちも、コウタと同じような思い出がある、かつて子どもだった方たちも、ひととき、懐かしい夏の海へとトリップさせてくれる素晴らしい絵本です。

夏になると必ず読みたくなる一冊です。

 

⑧『きつねをつれてむらまつり』

こわせたまみ・作

二俣英五郎・絵
教育画劇

今日は山の向こうでお祭りです。

おもちゃを積んだ車を引いて、あちこちのお祭りに行っておもちゃを売る仕事をしている、ごんじいは、峠に着くと、やれやれとひと休みしました。

 

ふと見ると、やぶの影で、1匹のきつねがくるんと宙返りをしています。

 

(にんげんなんぞに ばけて、おまつりにでも いきたいんじゃな)

そこで、ごんじいは言いました。

「さて、そろそろ でかけようか。だれか、いっしょに いってくれるこどもでも いると いいんじゃが…」

 

すると、待っていたように一人の男の子が「ごんじい、いっしょに いこう」と言って走り出てきました。

 

ごんじいはびっくりしました。

だって、体や手足は人間の子どもなのに、顔だけきつねの男の子が「どうだい!」といった様子で立っていたからです。

 

ごんじいはだまされたふりをしてあげることにして、「いいこじゃな」と言うときつねのままの顔がみんなに見られてしまわないように、お面をかぶせてやりました。

 

二人は本当のおじいちゃんと孫のように、仲良くお祭りに出かけていきます…。

今より少し昔の、ノスタルジックな村祭の風景や、素直で可愛いきつねの子ども、きつねにだまされたふりをして、本当の孫のようにかわいがるごんじい、心優しい村の人々。

 

人と自然が共存して暮らす、ゆったりとした時代を思い起こさせるような心温まるお話です。

 

 

⑨『とうもろこしおばあさん』

秋野和子・再話

秋野亥左牟・画
福音館書店

ある村に一人のおばあさんがやってきました。

「ここに ひとばん とめてくださらんか」

「子どもがいっぱいで泊めてあげられない」と断られたおばあさんは、次の村に行きます。

 

次の村でもおばあさんは、同じように、泊めてもらえないかとお願いしますが、「見知らぬおばあさんを泊めるわけにいかない」と断られます。

 

おばあさんは歩き続けて、ついにアリゲーターという小さな村にたどりつきました。

この村では、「どうぞ、どうぞ、おばあさん、すきなだけ いてください」と言われ、泊めてもらうことができました。

 

翌朝、大人たちは仕事に出かけ、おばあさんは子どもたちと、村に残りました。

子どもたちが遊んでいると、おばあさんの姿が見えなくなります。

 

おばあさんは見たこともないパンを持って再び現れ、そのパンを子どもたちに渡しました。

子どもたちの話を聞いた大人たちも不思議なパンを食べたくなり、おばあさんに頼みます。

 

大人たちもおいしくて大喜びしました。

これがなんなのかおばあさんに聞くと、「とうもろこしというもんだよ」と教えてくれましたが、どこで手に入れたのかは、教えてもらえませんでした。

 

とうもろこしをどうやって手に入れているのか気になった若者は、ある日、おばあさんの跡をつけていきます。

おばあさんがテントの中に入ったので、若者はこっそり中を覗いてみました。

すると………。

 

その夜、今まであんなにおいしかったとうもろこしを、若者は食べることができませんでした…。

 

若者がとうもろこしを食べられなくなるのも無理がないくらいの衝撃。

非常に生々しいのです。

 

しかし、考えてみると、私たちはみんな、とうもろこしのような野菜でもお肉でもお魚でも、「生きたもの」、所謂「生(せい)」をいただいて食べているのですから、「生々」しくて当たり前なのですよね。

 

非常にアメリカ・インディアンらしい、しっかりと土地に根付いた、いいお話です。

 

こちらは絵本ですので、耳だけで聞くよりリアルで、やや衝撃的に感じる場面もあるかもしれませんが、もともとは、口承伝承で、伝わってきたものでしょうから、もしかしたら衝撃的な場面も、もっとナチュラルに捉えられていたのかもしれません。

 

とはいえ、秋野亥左牟さんのアーティスティックな挿絵はこのお話に非常によくあっていて、私たちは、物語の世界にすんなり入り込み、遥か昔のアメリカインディアンの地に思いを馳せることができます。

 

とうもろこしをちょっとだけ食べづらくなる可能性は否定できませんが、本当の食育と深くつながっている素晴らしい絵本だと思います。

 

とうもろこし、嫌いになったらすみません。

 

⑩『ちょうちんまつり』

唐亜明 文

徐楽楽 絵
福音館書店

昔、中国のある村に、王七(ワンチイ)というお百姓がいました。

 

王七が畑仕事に出かけようとすると、妻は、「こんやは、ちょうちんまつりですから、はやくかえってきてください。〈中略〉それから、かえりにまきをすこしとってきてください。かがり火をたきますから」と言いました。

 

昼過ぎ、王七は、いつもより早く仕事を終え、斧を片手に、薪を探して山に登って行きました。

 

すると、山の中に大きなほら穴がありました。「こんなところに、ほら穴があったかなぁ」と不思議に思いながら中を覗くと、真っ白い髭の、二人の老人が碁をうっていました。

 

王七は、碁が大好きなので、つい近寄って見物し始めました。
二人は王七を気にも留めず碁をうちつづけます。
そして、そばにある壺の中から、なつめの実を取り出して、口に入れました。

王七にも一つくれました。

 

王七がそれを食べてみると、なんとも言えないほどおいしく、そのうえ、たった一つ食べただけなのに、おなかがいっぱいになってしまいました。

 

王七が老人たちの顔を見ると、ついさっき胸までしかなかった真っ白い髭が、いつのまにか膝の上まで垂れ下がっていました。

 

王七は、気味が悪くなって斧を持って逃げ出そうとします。ところが、斧の柄は腐ってぼろぼろになり、刃はすっかり錆びて、赤茶けた土の塊のようになっていました…。

このお話は、とても「すごい」お話です。

ほら穴で不思議ななつめの実を食べて、時間がとてつもなく進んでいるというところは、浦島太郎や、他の昔話でも見たことがありますが、このお話はそれだけでは、ありません。

 

そこからの展開が凄まじいのです。
時空を超え、大気圏をも超えて行く、ものすごいSF大作です。

 

巻末を見ると、「『列仙全伝』1600年、『FAIRY TALES FROM CHINA』1880年代、『支那童話集』1925年、に基づいて再話しました。」
と書かれているのですが、関ヶ原の戦いの頃に、これだけのずば抜けた想像力を持った人物がいた、もしくはそれ以上前から、口承伝承されていたのかもしれませんが、そのことにとても感動を覚えます。


やはり、昔話には、ロマンがありますね。

最後は安心のハッピーエンドです。

oicchimouseが全力で推す一冊です。

 

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2回にわたってご紹介させていただいた『夏休みに読みたい絵本10選』、いかがでしたでしょうか?

 

絶版になっているものも多いのですが、ぜひこの夏、図書館などで探して手に取っていただけるとうれしいです。

みなさま、すてきな夏をお過ごしください!

 

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