【今日のおすすめの本】(対象…小学校中学年頃〜)
『ふしぎの時間割』
岡田淳 作・絵
偕成社
(あらすじ)
これは
いくつかの小学校の
それぞれの季節
それぞれの時間のお話ー
〈もくじ〉
朝…五つめのおはようとはじめてのおはよう
一時間目…ピータイルねこ
二時間目…消しゴムころりん
三時間目…三時間目の魔法使い
四時間目…カレーライス三ばい
五時間目…石ころ
六時間目…〈夢みる力〉
放課後…もういちど走ってみたい
暗くなりかけて…だれがチーズを食べたのか
夜…掃除用具戸棚
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授業中、床の割れ目に消しゴムを落とした女の子。
床の割れ目からその消しゴムを持って出てきたのは1匹のヤモリ。
ヤモリは、特別に他にもう一つ消しゴムをくれました。
それは、『本当でないこと』だけ消せる消しゴムでした…
(消しゴムころりん)
飛んでいったボールを探している途中、「としお」が体育倉庫の裏で出会った不思議な雰囲気のおじいさん。
百葉箱にもたれて地面に座りこんでいるおじいさんは、としおに自分のことを「何者だと思うね。」とたずねます。
「まさか、魔法使いじゃないでしょ。」と答えるとしおに、おじいさんは「魔法使いだったら、どうする。」と言います…。
(三時間目の魔法使い)
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いろいろな学校での一場面を切り取ったオムニバスストーリーで、時間割形式で区切られているので、長編に慣れていないお子さんにも読みやすい本です。
学校という超現実的な世界。
そこでちょっとした不安を抱えていたり、迷いがあったり、いろいろな方向に心が揺れ動く成長途中の子どもたち。
そんな子どもたちがふとしたきっかけで少しだけ迷い込む不思議な世界。
5分、10分ほどの不思議な世界はすぐに消えて、子どもたちは再び現実世界にもどりますが、そこにいる子は5分、10分前と同じではありません。
少し心が成長しているのです。
ファンタジーのようでファンタジーではないような、現実とファンタジーの絶妙な境目が描かれています。
子どもたちの目から見えている学校での日常は、意外とこんな風に現実とファンタジーが入り混じったカオスな世界なのかもしれません。
作家活動と共に、定年退職まで教師を勤め上げられた岡田さんだからこそ描き出せる、学校という空間が持つ独特の気配と、その中に身を置く成長途中の子どもたちの複雑な心の機微。
それら全ては本当にリアルで、岡田作品に触れた子どもたちがあっという間にファンになってしまうのも納得です。
長い夏休みが終わり、学校の始まりがちょっぴり不安な子どもたちにぜひ、読んでいただきたい一冊です。
あなたが通っている学校の裏側にも、隠されたもう一つの学校の姿があるかもしれませんよ。