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7.ウォーター奥様、ご機嫌いかが?〈最終話〉
ある日、ムッラと私は、奥様ごっこをしようと思ったの。
私がミルポッレ奥様で、ムッラがウォーター奥様よ。
私たちは大人の服を着たかったけど、お母さんがいたら怒られちゃうから着れないの。
私たちはどうすればいいか考えたわ。
「私がベッラの家へ行ってやればいいんじゃないの?」と、ムッラ。
「でも、私のお母さんにバレちゃうわ。」と、私。
「じゃあ、お母さんをどっかの家におびきよせるとか?」
「いいね。そうしよっ。」と、ムッラは大賛成よ。
「じゃあ、学校のすぐそばのカデジーさん家にしましょう。」と、私。
「でもどうやっておびきよせるの?」
「私にまかせて。」
私は言ったわ。
そして、ムッラを連れて急いでカデジーさん家に向かったの。
そして、カデジーさんに、手紙を書いてほしいと頼んだ。
つまり、こういうことなの。
手紙のびんせんには、「一緒にお茶会しましょう」と書いていて、それを見たお母さんはカデジーさん家に行く。
そしたらその間に私たちは奥様ごっこができるってわけ。
カデジーさんは大人だけど、いたずら好きで遊び心のある人だからすぐにオーケーしてくれたわ。
そして、すぐに白いびんせんと、こんな変なかっこうをした人のふうとう(ほら、遊び心のある人って言ったでしょ)を出して手紙を書き始めた。
ベナティーの奥様
一緒にお茶会でもしません?
ベッラちゃんが心配?大丈夫。
ベッラちゃんはもう大きいんだから
一人でも安心安全ですわよ。
かしこ
カデジーより
私たちは、カデジーさんにお礼を言うと、家に帰ったわ。
それから、次の日、私のお母さんはカデジーさん家へ出かけていったの。
(きっと手紙が届いたのね。)
私はムッラに向かって、指を「パチン!」ど、ならした。
ムッラは私の家に飛んできたわ。
「お母さんがカデジーさん家に行ったわよ。着替えましょ。」と、私。
私たちは着替えている間も奥様ごっこをしていたの。
一人が相手をちら見したら、もう一人が「いやーん、はずかしいざます。」なんて言うの。
二人は、やっとこさお母さんの服を着終わった。
私はお母さんが一番気にいっているシルクのドレスを着たわ。
ピンク色でフリルがたくさん付いているの。
それから胸と胸の間に花の絵があるの。
ムッラはお母さんが一番きれいに見えるシフォンのドレスを着たわ。
紫色で、キラキラがたくさん付いているの。
右の腰と左の腰の間に猫の絵もあるの。
二人とも美しくなったし、おひきずりのドレスも似合っていたわ。
「ご機嫌いかが?ウォーター奥様。」と、私のミルポッレ奥様が言うと、「いいえ。私は今大変怒っていますの。道の向こうの若奥様が、うちの坊やに敬語で話さなかったのざます。」と、ムッラのウォーター奥様が答えたわ。
しばらくしずんだあげく、私のミルポッレ奥様が「そうざますね。きっと若奥様は奥様ほど上品でないのよ。それにしてもそちらの坊やに向かって言うなんて。オーホホホ。」と言ったわ。
「オーホホホ。」の時、高い声を出すのが大変だったけど、学芸会でペルシャ猫の奥様の役をやった時を思い出して、やっとこさ高い声を出せたのよ。
あの時、三毛猫少女の役を選んでいなくてよかったと今思ったわ。
「そうよね。うちの可愛い坊やにそんなことするなんて奥様とは言えませんわ。」
二人の奥様は仲良しでいつも一緒にいても疲れないの。
二人は良い奥様だけど、たまに悪だくみもするのよ。
(「オーホホホ。」なんて言う奥様で悪だくみしない奥様なんていないのよ。 )
でも、すぐにやってしまった人に謝るの。
礼儀正しく、上品にね。
ままごとの世界で次の日になったわ。
その日もウォーター奥様は怒っていたの。
ミルポッレ奥様もつられて怒ってしまったわ。
その原因も、同じ若奥様で、ウォーター奥様のお嬢様を抱っこしたからなの。
それは優しさだし、若奥様は良い奥様だけど、怒りっぽい性格の二人の奥様は「うちの子を勝手に抱っこするなんて!」「私の友達の子に!」って思ったのね。
二人は「悪だくみ」したわ。二人で若奥様に苦情が書いてある手紙を出すの。
でも、私たちは途中で、「若奥様」の役の人がいないことに気づいたわ。
どうしようかと思っていると、そこにミッラが「入れて」と、来たの。
ミッラは若奥様の役がよかったから、若奥様になったの。
若奥様の名前も決めたわ。
キラディラ若奥様よ。
黄緑色のヒラヒラのドレスを着ている、ほかの奥様と同じくらい美しい奥様よ。
さて、キラディラ若奥様は、ウォーター奥様とミルポッレ奥様からの手紙を読んで、わっと泣き出してしまったわ。
(もちろん泣きまねよ)
それを見ていたミルポッレ奥様とウォーター奥様は、とても、礼儀正しく上品にあやまったわ。
キラディラ奥様は「いいですわ。」と言って、仲良し三人組になったのよ。
「なんていい話なんでしょ。」
私は思ったわ。
奥様ごっこをしていると、お母さんの足音が聞こえた。
コツコツ、コツコツ。
私たちはその音を聞いて、急いで着替えたわ。
そして、二人を家の前まで見送ると大慌てでソファーに座ったの。
いたずらしたのに、「よくお留守番していたわね。」と、ほめられて、なんか照れくさくなっちゃったわ。
【おわり】