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oicchimouseの森の図書館員がめくるめく絵本の世界をご案内いたします。お子さまも大人の方もどうぞひと休みしていってくださいな。

夢中で遊んだあの日々が色鮮やかによみがえる『だいスキ友だち大親友』(日曜連載小説)…第3話夏休みの海

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3.夏休みの海

 

 

今日は終業式の日。

 

 

 

私は「あしたは夏休みだっ!」って浮かれてたわ。

 

 

 

いつもはお嬢様風のワンピースを着てるし、靴だってヒールばっかりだけど、今日はデニムパンツにちびTで、いかにも元気っ子て感じがしたわ。

 

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やっぱ夏はこうでなきゃあね。夏っぽくないもの。

 

 


私は垣根の上をスタスタ歩いたわ。

 

 

 

道を歩くなんてつまんないのより、そうとう楽しいの。

 

 


カデジーさんの垣根から、学校の屋根に飛び移って、大きな時計のはりを回して、いたずらしたりしたわ。

 

 

 

下を見下ろしたりもしたわ。

 

 


見下ろしてみたら、小さな女の子の形が見えたの。

 

 


もっとよく見ようって、少し下の時計の上のくぼみに座ってみたら、それはムッラだったわ。

 

 


(あれ、なんでだろう。ムッラも垣根の上を歩くはずなのに。)
 私は思ったの。

 

 


そこで、「ムッラー!私だよ!ベ・ッ・ラだよーっ。」と、どなってみたわ。

 

 


すると、「パチン」という指を鳴らす音が聞こえてきたの。

 

 


これは、二人の暗号の中の一つで、「早く来てちょうだい。伝えたいの。」と言う意味なのよ。
(他にも、親指をつねる「大好き」や、ベロを「ベー」頭出す「ベッラ」や、「ムッ」とした顔をする「ムッラ」などいろいろあるの。)

 

 


私は急いで小学校のビルからジャンプして飛び降りたわ。すると、下には本当にムッラがいたの。

 

 


ムッラは、「ベッラ、話を聞いて。私、夏休みに入るのが悲しいの。だって勉強も先生も大好きなんだもの。ベッラみたいに、垣根の上に登る、なんて浮かれたことしたい気分じゃないわ。」と、悲しげに言ったの。

 

 


私は首をかしげたわ。

 

 


夏休みが嫌いな子なんているものかしら。

 

 

 

「でも、ベッラが隣の席で安心よ。」
 ムッラはつけたしたわ。

 

 


なんだか私まで悲しくなってきちゃった。

 

 


私とムッラは、大好きな友達だから、ムッラが悲しかったら、私も同じ気持ちになるのよね。

 

 


「学校、行きたくない。」
 ムッラは言ったの。

 

 


「でも行かなきゃだめよ。先生が悲しむわ。」
 私はそう言って、ムッラの手を引いたわ。

 

 

 

私はやっとこさムッラを連れて小学校に着いたの。

 

 


学校では「夏休みパーティー」をやったのよ。みんながお店屋さんになって、イベントを開くの。

 

 

 

特に大人気なのは、「魚釣り」。

 

 

 

エリザベスとミリザベスが開いたお店で夏にぴったりだったのよ。

 

 


私たちが開いたのは、「人魚すくい」。

プラスチックの置物の人魚をすくうの。

 

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私のペアは誰だって?もちろんムッラよ。

 

 


人魚すくいも大人気で一番人気だったから、先生にトロフィーと金メダルをもらったわ。

 

 

 

私はトロフィーを持ち帰って、ムッラは金メダルを持ち帰ったの。

 

 


しばらくして「夏休みパーティー」が終わると、先生とみんなにさよならを言う時間になったわ。

 

 


「さようなら。」が終わったら、みんなはいっせいに走って帰っていったのよ。

 

 


もう教室に残っているのはムッラと私だけ。

 

 


「一緒に帰ろっ。」
 私は誘ったわ。

 

 


「いいわ…」「別に…」
 ムッラはまだうかない顔のまま。

 

 


私はどうにか元気づけるために、サラの話をしたわ。

猫好きのムッラだから元気になると思って。

 

 

 

まだしていない話で、サラが私に向かって、「ベッラ」と言ったときの話なのよ。

本当はベロをベーって出して「ニャン」って鳴いたのが「ッラ」って聞こえただけなんだけど、その聞こえ方と人の名前が当たるなんて奇跡じゃない?

 

 


でも、ムッラはこくん、とうなずいただけだったわ。

 

 


私はムッラと家に帰ると急いでムッラの姉のムッレに相談したわ。
(姉なら妹が喜ぶものがわかるでしょ。)

 

 


ムッレは、「ムッラを海に連れて行くといいわ。そして、私が乙姫様の服を着て、本当の乙姫様だと思わせるの。すると喜ぶわ。ムッラは不思議が好きだからね。」と、教えてくれたの。

 

 


私は「それはいい」と賛成したの。

 

 


ムッレは笑顔だったわ。

きっと、ムッラと私の笑顔が好きなのね。(私にもお姉ちゃんがいたらいいなって一瞬思ったわ。)

 

 


私はムッレに礼を言うと、ムッラの部屋に入ったわ。

 

 


「気分転換に海へ行こう。きっと楽しいわ。」
私は話しかけた。

 

 


でも、ムッラは首を振るばかり。

 

 


「私も一緒に行くわよ。」

 

 


ムッラはそれを聞いて「行く!」と叫んだわ。

 

 


私たちは手をつないで海へ向かったわ。

 

 

 

海の水は「ザアブンザアブンザアブンザアブン」と揺れていて、とってもきれいだったわ。

 

 

 

「海入ろう。」と私。

 

 


「でも私泳げないの。」ムッラは言ったわ。

 

 


「じゃぁ、手をつないで泳ごう。」私は明るく答えたわ。

 

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しばらく泳いでるうちに、ムッラも上手に泳げるようになってきたの。

私より上手な時もあるくらいよ。

 

 


こうして泳いでいるうちに、私たちが見つけたのはムッレが変身した乙姫様よ。

 

 


ムッラは、「素敵。素敵。本当のプリンセスよ。」と言って喜んでいたわ。

 

 


それを見ていた私も、「素敵。素敵。」と喜んじゃったわ。正体を知っているはずなのに。

 

 


ムッレは帰りに玉手箱をくれたわ。

 

 


「絶対に開けないでくださいね。」
 と、ムッレ。

 

 


私とムッラは海から出て、玉手箱の中を見たくなったわ。

 

 


そして見たの!

 

 


でも、中を見てもおじいさんにならなかったわ。

 

 

 

そのかわり、中には、小さな小さな子犬が入っていたの。

 

 


私は茶色くて、耳に白いハートがあるのを。ムッラは、白くて耳に茶色いハートがあるのを持ち帰ったの。

 

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二匹は双子なんですって。とってもよく似てたものね。上の絵を見てみてごらん。かわいいでしょ。本当に。

 

 


この子犬の名前は、私のはサラと似させてラサ。

ムッラのはムムと似させてムッムと名付けたわ。

 

 

 

二匹は本当に元気で、キャンキャンって私たちに吠えてきたわ。

私たちのことをお母さんだと思っているのね。

 

 

 

そこにサラとムムも出てきたわ。するとラサとムッムはサラとムムに噛み付こうとしたの。

 

 


でも、私たちが「落ち着いてね。かわいい子犬たち。この子猫たちは私たちの大切な友達なの。」と言うと、すぐに落ち着いてサラたちをなめはじめたわ。

 

 


するとサラたちの方もラサたちのことをなめはじめたの。

 

 

 

この光景がとても可愛くて、私たち思わず笑っちゃった。

すると子猫と子犬は、私たちの肩や頭に飛び乗ってくれたの。

 

 


私とムッラは、優しく、動物を撫でてあげたわ。

 

 


その日から私たちは毎日学校の前まで子猫と子犬を散歩に連れて行って、授業が終わるまで小屋に入れておいたの。

 

 

 

授業が終わると、私たちが名前を呼ぶ前に動物たちが鳴いてくるの。

(小屋は先生が作ってくれたのよ。先生、アイリー先生っていう人でとっても優しいの。)

 

 


これもムッレのおかげね。わたしたち、すごく運がいいものよ! 


 

 

 

(来週日曜 第4話「こねことこいぬと私たちの店」に続く)

 

 

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