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oicchimouseの森の図書館員がめくるめく絵本の世界をご案内いたします。お子さまも大人の方もどうぞひと休みしていってくださいな。

夢中で遊んだあの日々が色鮮やかによみがえる『だいスキ友だち大親友』(日曜連載小説)…第2話ひみつきちごっこ

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2.ひみつきちごっこ
 

 はじめの頃、私たちはリンゴの木の穴の中にひみつきちを作っていたわ。

 

 

 

 大きくなってきたら、お小遣いをぜーんぶ使って、二人の家を建てたけど、その話はあとにしましょう。
 

 

 

 ある日私たちは、ひみつきちを作りたいって思ったの。2人同時に「秘密基地作りしよう」って言ったのよ。

 

 

 

 同時に同じことを言ったと気がついた私は、笑って笑ってお腹が痛くてね、ヒリヒリしちまったくらいよ。

 

 


「じゃあ、リンゴの木の前に行きましょ。」と私。
「いいわ。」ムッラも答えたので、私たちはリンゴの木の前まで行ったわ。

 

 

 

でも、ただ歩いてちゃつまらないでしょ。だから私、「かけっこしていく」っていうアイデアを出したの。それにはムッラも「いいわ」って賛成して、かけっこをしたわ。

 

 

 

 私たち、これよりスピードは出せない、っていうくらい思い切っていたわ。

でも勝ったのはムッラなの。ムッラは足がとっても速いんだもの。

 

 

 

 私はムッラに折り紙のメダルをプレゼントしたわ。ムッラはとても喜んでくれて、「ありがとうございます」って深く深くお辞儀をしたわ。

 

 

 

ムッラって、礼儀正しいのよね。

 

 


 負けたのに、とても嬉しかったのは私も同じなの。人にプレゼントするのは楽しいし、まさか用意していたかのように、ポッケからメダルが出てくるなんて、不思議でたまらなかったしね。

 

 


 さて、やっとリンゴの木の前に着いた私は、リンゴの木に穴が開いているのに気がついた。

 

 


 私は声を張り上げて叫んだの。

 

 


「ムッラ!リンゴの木に穴がある!中は広そうよー!」
 ムッラは飛んできたけど、首をかしげるばかりだったわ。

 

 


「これ、何に使えるかしら。ベッラ、何かわかるの?」

 

 


 私は、手を腰に当てて軽く曲げると、大いばりで言ったわ。

「あったりまえじゃない。ひみつきちにするの。中に入ったら楽しそうじゃない?」

 

 


「いいわ。」
 ベッラも答えたの。

 

 


 そして私たちは穴に入ったわ。入ってしばらく奥に進むと、下に落ちる暗い穴が見えたの。

 

 


 私はおそるおそる話したわ。

「ムッラ、下に穴があるから気をつけて。」

 

 


 でも、その時にはムッラはもう穴に落ちてしまっていたの。

 

 


 私は、慌てて「ムッラー!」と叫んだわ。

 

 

 

でも、そのひょうしに地面が揺れ、私まで穴に落ちてしまったの。

 

 

 

下から「ベッラー!」という泣き声混じりのムッラの声が聞こえてきたわ。

 

 


 「ヒェー!」
 私も叫んだわ。

 

 


 あまりにもびっくりしていて、時も、心臓も何もかもが止まっていたかのようだった。

 

 


 下にはムッラがいたわ。

今にも泣き出しそうな様子だった。

 

 

 

私はムッラがかわいそうに思えて仕方がなかったわ。

 

 

 

やっと、私も地面につけたけど、暗くて何も見えなかった。

 

 

 

私はリュックサックの中からランプを出してあたりを照らしてみたわ。

 

 

 

すると、前のほうにムッラが見えたの。

 

 


「ムッラ!」
 私はムッラの方へ行こうとしたわ。

 

 

 

でも、その前にムッラが私のほうへ来たの。

そして私に抱きついた。

 

 

 

ムッラの顔は涙と汗でくしゃくしゃになっていたわ。
「ベッラ、暗いよ。こわいよ。早くお家に帰りたいよ。」

ムッラは本当に泣き出してしまった。

 

 


「そうだね。怖いね。でも一日。一日待てば帰れるよ。」
 私は、ムッラをなぐさめたのよ。

 

 

 

でもムッラは、
「一日なんて遅いよ。今すぐがいい。」
 と、泣きじゃくるばかりだったわ。

その日は二人でずっと抱き合っていた。

 

 


 次の日になって、私たちは一緒に目を覚ましたの。そこはムッラの家だったわ。

 

 

 

ムッラのお母さんが私たちをベッドに寝かせてくれたんですって。

ムッラは私に昨日の夜のことを話してくれたわ。

 

 


 私がぐっすり寝ても、ムッラはずっと起きていたそうなの。

もう泣き止んではいたけど、ずっと月を見ていたんだって。

 

 

 

 そこに、ムッラのお母さんとお父さんが来て、私たちを寝かしてくれた、ってわけなの。 

 

 

 

 何回も落ちて怖かったけど、何かドキドキして夢がある一夜だったわ。

 

 

 

またあってもいい、ってちょっとだけ思う。

 

 

 

(来週日曜 第3話「夏休みの海」に続く)
 

 

 

 

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