【今日のおすすめ絵本】(対象…低学年から)
『ゆうきのおにたいじ』
征矢 清 さく
土橋 とし子 え
福音館書店
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(あらすじ)
征矢清さん、土橋とし子さんコンビによる『ゆうきのおにたいじ』。
ある日、おじいちゃんと一緒に山へ遊びに行った「ゆうき」は、鬼にねらわれます。
おじいちゃんの助けもあって、なんとか命は無事でしたが、代わりにお母さんが作ってくれたお弁当の入ったリュックサックを鬼に奪われてしまいました。
ゆうきは泣き、おじいちゃんは腹を立てました。
「ええい、わるいおにめ」
「しかたない。あした、おにたいじにこよう」
ゆうきとおじいちゃんの世にも奇妙な、ゆる〜い「おにたいじ」のはじまりです……。
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途中、山の中に群生している謎の植物「かゆかゆいも」を触ってしまったゆうきは、手が大変なことになるのですが、これはお母さんの「かゆいの、かゆいの、とんでいけ!」で、なんと、あっという間に治ります。
「おにたいじ」から帰ってきたゆうきとおじいちゃんの話を聞いたお父さんは、野次馬根性から、ゆうきを連れて鬼に会いに行こうとします。そして、今度は鬼にお母さんとの思い出の品である腕時計を奪われてしまうのです。
このことを知ったお母さんは、ゆうきが助かったのはうれしいけれど、「とけいをあげなくたって、よかったんじゃないの!」とお父さんに激怒します。
そしてまた別の日、今度は腕時計を取り戻すため、ゆうきが一人で鬼退治に行くことになったのですが、その途中、おじいちゃんの友だちの「ちょうさん」に出会います。
実は、ちょうさんには、子どもの頃「鬼の家のそばに住んでいた」過去があって……
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鬼退治が、もはや毎日のライフワークと化している「ゆうき一家」のお話です。
最初は鬼退治だったはずが、鬼の子どもがうっかりゆうきの太鼓を壊してしまったときには鬼が弁償してくれたり、いのししの子どもたちと「いのししいもほりかい」に参加したりと、まるで小さな子どもが想像のおもむくままに自由に書き散らしたかのようなお話です。(良い意味で)
この、お話があっちにいったり、こっちにいったりして、先が読めないタイプのお話を私は「行きあたりばったり系絵本」と勝手に名付けているのですが、(かこさとしさんのだるまちゃんシリーズの中にも何冊か「行きあたりばったり系」があります)、このタイプの絵本は、先の読めない振り回される感じがクセになります。
実際、子どもが一歩外に出てお友達と遊びに行ったら、たまたま別の子と遭遇して合流したり、何から何まで当初の予定とはまるっきり違う、まさに行きあたりばったりの一日を過ごして帰ってくることがよくあります。
そして、自分の子どもの頃を振り返ってみても同じだった気がします。
美しく整っていないからこそ醸し出される「リアル」な子どもの日常が、この作品の中にはあるのです。
征矢清さんは、作品によって雰囲気がガラッと変わり、その引き出しの多さには本当に驚かされます。
今年デビュー50周年を迎えられた、奥様の林明子さんの作品と共に、ぜひお楽しみください。
※征矢さんは、元福音館書店編集者で林明子さんの担当をされていたそうです。