【今日のおすすめ絵本】(対象…4歳頃から大人まで)
『おじいちゃんとおばあちゃん』
ぶん…E・H・ミナリック
え…モーリス・センダック
やく…まつおか きょうこ
福音館書店
おじいちゃんとおばあちゃんの家に遊びにきた、こぐまのくまくんの一日が、順を追っていくかたちで、〈おじいちゃんとおばあちゃん〉〈おかあさんとこまどり〉〈こびとのゴブリン〉〈くたびれてなんかいない〉の4つのお話に分けてまとめられています。
こちらもセンダック挿絵の隠れた名作です⬇︎
「くまくんは、ここへくるのが だいすきでした。」
「いえのなかには、きれいなものや、おもしろいものが、たくさんあります。」
「それから、おばあちゃんの つくってくれるごちそうが、だいの だいの だいすきです。」
「『ぼく、たべすぎじゃないよね?』」
「『ええ、ええ、たべすぎじゃありませんとも!』」
「『ねえ、いいこと おしえてあげようか?』」
「『あのね、ぼく、ここがだいすき!』」
(〈くたびれてなんかいない〉より本文ママ)
「くまくんは、目をとじました。」
「『まあー』と、かあさんぐまはいいました。『ねむっているわ、なんて かわいいんでしょう!』」
「おとうさんぐまは、くまくんを だきあげて いいました。『ほんとだ。いいこだねえ。あしたは、つりにつれてってやろう』」
「『まあ、みてごらんなさいな』と、おばあちゃんが いいました。『こんないいこが ほかにいるかしら』」
「『それに、わしに にて、かしこい!』」と、おじいちゃんもいいました。」
「『くたびれてなんか いるものか。おまえみたいな こぐまと、わしみたいな じいさんぐまは、くたびれたりは せんのだ。いちにちじゅう、うたったり、おどったり、はしりまわったり、あそんだりしても、それでも、ちっとも くだびれないように できてるのさ』」
(〈おじいちゃんと おばあちゃん〉より本文ママ)
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この本を開くと、いつも幼い頃の祖父母の家でのわくわくするような楽しい思い出が色鮮やかによみがえります。
祖父母の家の、きらきらしたきれいなビンに入った沢山のウイスキー。
無限に出てくるお菓子や料理。
大人の飲み物だと思っていた紅茶をミルクとお砂糖をたくさん入れてもらって、初めて飲んだときの味。
何に使うのか分からない道具。
ビンに入ったインク。
不思議な民芸品。
初めて自分で釣ったお魚。
まるで、昨日のことのように思い出されます。
この本には「おじいちゃんとおばあちゃん」のすべてが、くまくんへの溢れる愛情と共にぎっしりと詰まっているのです。
くまくんの少しうつらうつらしながらのたぬき寝入りを、本当に寝ていると勘違いした大人たちがくまくんを、みんなで一斉に褒めちぎる場面は、くまくんが、いかにまわりの大人たちに愛され、大事にされているのかが、これでもかというほど溢れ出ていて、思わず笑みがこぼれてしまいます。
子どもにとってこの絵本は、今本当におじいちゃんおばあちゃんの家に行っているかのような気分になれる作品であり、大人にとっては遠き日のセピア色の風景が、祖父母の家の温かくてどこか安心できる重みのある香りと共に鮮やかに蘇ってくる不思議な作品です。
こどもたちには、親だけでなく、祖父母やおじさんおばさん、先生、その他、信頼できるたくさんの大人から愛された、大事にされた、という記憶が、とても大切だと思います。
そのことは、その子が将来壁にぶつかったとき、必ず助けになってくれると思うからです。
この本は、たとえ今、会うことができなくてもおじいちゃんもおばあちゃんもあなたのことを、これ以上無いほど大事に思っていて、あなたはみんなにものすごく愛されているのだ、と、子どもが実感するための大きな手助けになってくれます。
子どもたちにとって、人生のお守りとなるにふさわしい作品の一つです。
くまくんシリーズはどれも当たりはずれなしの素晴らしい作品ばかりです⬇︎