【今日のおすすめ絵本】(小学校低学年から大人まで)
『つきへいったら』
クロウディア・ルイス 文
レオナード・ワイスガード 画
藤枝澪子 訳
福音館書店
(あらすじ)
「ぼくが つきへ いったら かがくしゃたちには クレーターを たんけんしてもらおう。」
男の子は、想像の中で月へ行きます。
想像なのですが、そこはすでに本当の宇宙で、男の子は月に降りたって、地球を眺めています。
男の子は、迫力満点の美しい地球を月から望遠鏡で観察します。
「さばくはあかちゃいろだ。はたけや のはらは みどり こいみどりは もりのいろだ。ほっきょくは こおりで まっしろ。 ひのひかりが うみに あたって ピカッ と ひかる。」
男の子は月の山に腰かけて、日本の海辺とアメリカの海辺とを眺めます。
そして、砂浜で子どもたちが遊んでいる姿を思い浮かべます。
しだいに、地球の半分は暗くなり、男の子の家のあるあたりはだんだんと暗い方に入って行きます。
男の子は、何千万という人々が自分の今いる月に目を向けていることを、思い浮かべます。
男の子は、月の基地で寝ます。
「ちきゅうは ちかい。おやすみ。こちらは うまくいっている。ちきゅうでは どうかな。」
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こちらは科学絵本ですが、いい意味でそれをまったく感じさせません。
児童文学者でもある著者のクロウディア・ルイスが「子どもというものは、からだ全体でものごとを感じとる。だから、作家が生きた言葉をつかみとり、耳に快い響きやリズムをだしてやれば、子どもは耳を傾け、くりかえし聴くだろう。」と述べているとおり、この絵本は、科学絵本でありながら、とても耳に心地のよい美しい言葉で紡がれており、詩をよんでいるような気分になります。
美しい文章にぴったりの素晴らしい挿絵は、1947年コールデコット賞受賞のレオナード・ワイスガード(レナード・ワイスガード)です。
ファンの方も多いですね。
表紙も美しいですが、中はさらにすごいことになっています。
この絵本という小さいスペースの中に本物の宇宙が広がっていて、主人公と共に、読者も本当に月に降りたつことができます。
まさにファンタジーと科学の融合。科学絵本というカテゴリーに、収まりきらない名作です。
巻末には、東京天文台の平山智啓さんによるあとがき、「月からみた地球」も掲載されていますが、こちらも素晴らしいです。
お月見にぜひ…
〈『つきへいったら』おまけのエピソード〉
以前図書館で借りて読んで、この本のあまりの美しさに虜になり、Amazonなどを探しましたが、古書でも見つからず。
Instagramを通じて古書店のFrobergue(フローベルグ)さんに「探求本」という形で依頼し、ずっとこの本を探していただいておりました。3年前(2020年)のちょうど今頃(9月半ば)のことです。
すでに絶版で希少なため、やっぱり見つかるのは難しそうかな…と諦めていたのですが、それが先日、入荷のご連絡をいただき、3年の時を経て、ついに昨日私の手元にやってきたのです。
長い間、待ち望んだ絵本の扉をそっと開いた瞬間の高揚感、店主さんが本に添えてくださった心のこもったお手紙。丁寧な梱包から、一冊一冊の本への愛情がとても伝わってきました。ぜひ、今度は実店舗にもお伺いしたいと思います。
お店はこちらです⬇︎オンライン販売もされていますので、遠方の方でも購入できます。