【今日のおすすめ絵本】(対象…低学年から大人)
『サンタクロースっているんでしょうか?』
子どもの質問にこたえて
〈一八九七年九月二十一日ニューヨーク・サン新聞「社説」〉
中村妙子 訳
東逸子 絵
偕成社
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(あらすじ)
〈一八九七年九月二十一日 ニューヨーク・サン新聞「社説」〉
ニューヨーク・サンしんぶんしゃに、このたび、つぎのような手紙がとどきました。
さっそく、社説でとりあげて、おへんじしたいとおもいます。
この手紙のさしだし人が、こんなにたいせつなしつもんをするほど、わたしたちを信頼してくださったことを、記者いちどう、たいへんうれしくおもっております。
***
きしゃさま
あたしは八つです。
あたしの友だちに、「サンタクロースなんていないんだ。」っていっている子がいます。
パパにきいてみたら、
「サンしんぶんに、といあわせてごらん。しんぶんしゃで、サンタクロースがいるというなら、そりゃもう、たしかにいるんだろうよ。」
と、いいました。
ですから、おねがいです。おしえてください。サンタクロースって、ほんとうに、いるんでしょうか?
バージニア=オハンロン
ニューヨーク市西九五丁目一一五番地
(本文ママ)
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アメリカの『ニューヨーク・サン』新聞にのった社説が中村妙子さんによって翻訳され絵本になったものです。
今ではクリスマスを代表する古典の一つとなり、ファンも多いですね。
私もちょうど、サンタクロースが本当にいるのか怪しく思いはじめた頃、家にあったこの本を読みました。
子どもだった私が、この本を読み終えて思ったのは、「サンタクロースが本当にいるかどうか」ではなく、この世の中には、「子どもがサンタクロースを信じる心を、こんなに大切に守ってくれる素敵な大人がいるんだ」ということでした。
そのことは、サンタクロースが実在することと、同じくらいドキドキワクワクすることで、結果、私の中で「サンタクロースはいる」ことになりました。
『東京子ども図書館』名誉理事長であり、児童文学作家の故・松岡亨子さんは著書、『サンタクロースの部屋 子どもと本をめぐって』(こぐま社)の中で次のようにおっしゃっています。
「心の中に、ひとたびサンタクロースを住まわせた子は、心の中に、サンタクロースを収容する空間をつくりあげている。
サンタクロースその人は、いつかその子の心の外へ出ていってしまうだろう。
だが、サンタクロースが占めていた心の空間は、その子の中に残る。この空間がある限り、人は成長に従って、サンタクロースに代わる新しい住人を、ここに迎えいれることができる。
この空間、この収容能力、つまり目に見えないものを信じるという心の働きが、人間の精神生活のあらゆる面で、どんなに重要かはいうまでもない。」(本文ママ)
クリスマスの朝に目を覚ますと、なんだかいつもすがすがしいような、満ち足りた気分になっているのは、きっと夜の間にサンタさんが、大人になった私にも何か置いて行ってくれているからだろう、といつも思います。
サンタさんの存在を怪しんでいる子どもたちにぜひ読んでいただきたい一冊です。