【今日のおすすめ絵本】(対象…5歳頃から)
アニタ・ローベル 文と絵
松井るり子 訳
セーラー出版
(あらすじ)
大きな森のはずれの古い家に住む、父さんと母さんと一人娘。
家族は一生懸命働きますが、暮らしぶりは貧しく、ついに食べ物が尽きてしまいます。
娘は、家族のために市場へ行き、雌牛を売って食べ物を買うことにしました。
ところが、市場へ行く途中の暗い森の中で娘は3人の泥棒に誘拐されてしまいます。
泥棒の家に閉じ込められた娘は、掃除、泥棒の服へのツギあて、晩ご飯の用意、を毎日させられました。
父さん母さんを思って泣きながら働く娘でしたが、ある日、娘はいいことを思いつきます。
娘は藁で「わら人形」を作り、自分の服を脱いで、わら人形に着せ、「わらむすめ」を作りました。
それから壺に入った蜂蜜を自分の体中に塗り付け、羽根枕の中の羽根をすっかりふるいだし、その中を転げ回り、大きな鳥のようになりました…。
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挿絵では娘が作った「わらむすめ」は完全に藁の人形ですし、娘が体中を羽根で覆った姿は「大きな鳥」ではなく、完全に「鳥人間」もしくは「鳥の羽根をまとった人間」です。
ところが泥棒たちは、「わらむすめ」を間近で見ても、最後まで本物の娘だと見破ることはできず、羽根だらけの娘とすれ違っても「なんてふしぎな トリだろう」と言っただけで、「鳥である」ことには一切疑いを持ちません。
娘の服を着れば、それはもう娘。鳥の羽根をまとえば、それはもう鳥なのです。
ドイツ文学者の小澤俊夫さんの著書では、昔話では「皮」が全て、というようなフレーズがよく出てきますが、こちらの絵本は、アニタ・ローベルさんの創作でありながら、非常に昔話的な要素もあって興味深い一冊です。
アニタ・ローベルさんは、『がまくんとかえるくん』のシリーズでお馴染みのアーノルド・ローベルさんの元奥様としてもよく知られていますが、どの作品も、絵やストーリーに温かみがあふれています。
ぜひ、他の作品も手にとってみてくださいね。